黒子のバスケ | ナノ






突然だが、俺はこの頃緑間を避けている。

部活でもちゃんとパスは出すしコンビネーションはばっちりだと思う。

ただ、いつも一緒にいなくなったというか…まあそうなんだけど。

出来るだけ違う友達といるようにしている。

嫌いになったわけじゃない。嫌いになんてなるもんか。

好きすぎて困るんだ。


「なあ高尾ー。お前緑間となんかあったのかよ?」

「へ?」

「この頃一緒にいねーじゃん。最近は真ちゃん真ちゃんって付きまとってたくせに」

「あー…や、別になにも」

「お前があんなんだったから、俺ら高尾が男に走ったのかと思ってさあ!モテるのに勿体ねえって」



男に走ってますが何か?

そんなこと言ったら、確実に俺は明日から一人になるだろう。

別にいいんだけどさ、一人でも。

特に“友達”っていう類でもないし。

ただ、離れてほしくないのは一人だけ。緑間だけは、離れてほしくない。

だから、俺はあいつに告白なんてしない。

だからいま距離を取っている。ちゃんと気持ちの整理がついたら、また元に戻ればいいさって。



 ◆



「……トイレ行ってるうちに皆帰るとかどゆこと?」



トイレに行って部室に寄ったら、最後に出るところだったらしい一年(同い年だけど名前知らない)に「もう部活終わったよ」なんて言われてしまった。


そして「緑間ならまだ残ってるよ。いつも通り」とも。ああ、こいつ緑間が居残り練習してんの知ってんだーなんて呑気なことを考えた。


体育館に戻るか戻らないか迷ったけど、よくよく考えればスポドリもタオルも置きっぱなしだったことに気付く。


あちゃー…これは戻らねば。髪をぐちゃぐちゃかき回して俺は体育館へ足を進めた。

近づくにつれて聞こえてくるはずボールの音が今日はしない。あれ?緑間いるんじゃねえの?


「……だから、……」


体育館に入る手前で緑間の声が聞こえた。誰かと喋ってる?

俺はそっとドアから顔をのぞかせると、珍しく体育館に携帯を持ち込んで誰かと電話している緑間の姿が視界に入った。



「もう、訳が分からないのだよ……」

『     』

「逃げてるわけじゃない。ちゃんと分かっては…いるのだよ」

『     』



あの緑間が、今に泣きそうな顔をしている。

俺はどうしようもなく、抱きしめたかった。完全にホールド出来ないけど。



「ちゃんと好きなのだよ……赤司」



 赤 司


好き?緑間は、赤司が好きなの?

そんなに泣きそうな、苦しそうな顔するくらい赤司が好きなの?緑間。



「でも、もう…辛いのだよ」

『     』

「好きでいることが、辛い。好きすぎて…辛いのだよ、赤司…っ」



――赤司が、好きすぎて辛いって、俺、そんなの全然、



「知らねえよ、真ちゃん……」



知らぬ間に呟いていた俺の小さな声が、大きな体育館には響く。

横を向いて電話していた緑間がびくりと肩を震わせて振り向く。

その顔はひどく驚いていて、綺麗に輝いている緑色の目が大きく開かれた。



「た、かお?」

「なあ、真ちゃん。俺、知らねえよ…?」

「すまない赤司。また掛け直すのだよ」



俺のためにわざわざ大好きな赤司との電話を切ってくれて、俺と向かい合ってくれる。

久々に緑間とこんなふうに向き合った。



「どうしたのだよ、高尾」

「……真ちゃんは赤司のことが好きなの?」

「まさか、聞いて…」



緑間の目に動揺の色が見えた。

ああ、そっか。そうなんだね、真ちゃん。



「おれ、俺ね」

「待て高尾。お前は何か勘違いを……」

「もう真ちゃんの側にいたくない」

「たかお」

「っ!」


真ちゃんがひどく悲しそうな顔をした。

そんな顔したいのは、俺のほうなんだけどな。



「いや…だ」

「真ちゃん…?」

「そばにいろ、たかお……っ」



――あ。

とうとう泣き出してしまった。どうしよう。どうして?



「俺は、赤司など好きではないのだよ…!」

「遠慮しなくてもいいよ、真ちゃん」

「遠慮などするかっ!大体お前がこの頃いやに俺を避けるのが悪いのだよ!分かっているのか高尾!」

「え、え?真ちゃんなんで逆ギレしてんの!?」

「お前のせいだ馬鹿尾!」



正直、怒った顔して泣いても…可愛いだけなんですけど…。

ってそんなこと言ってる場合じゃないか。

ていうかどういうこと?もしかしてこれって自惚れてもいいって感じ?



「ごめんね、真ちゃん。俺馬鹿だからさ、ちゃんと言ってくんないと分かんないや」

「……ばかお、ばか…!」

「ばかばか言わないでよ。ねえ、真ちゃん」

「おれは言わないのだよ…!お前が言え、いい加減!」

「言っても、いいの?」



いつの間にか涙は止まっていて、けれど目元が真っ赤に染まっている真ちゃんに、恐る恐る近づく。

――ねえ真ちゃん。俺、自惚れてもいいかなあ?

結構たくさん考えて、結構たくさん悩んだんだよ。足りない頭で何日も何日も。

俺が離れて行ってから、真ちゃんもたくさん俺の事考えてくれた?たくさん悩んでくれたんだよね?

赤司に言うくらい、俺の事好きになってくれてた……?

聞きたいよ、真ちゃん。言いたいよ、真ちゃん。



「真ちゃん、俺ね――」



大好きだから、ふたりで一緒に幸せになろう?





:少年Tの告白

初高緑!書きやすいかも…です。
巷ではHSKと言われてる高尾も、ただの高校生でたくさん悩んだりするんだよっていうことを書きたかったんです。
高緑あいしてる!







少年Tの告白



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