真太郎が待っているであろう公園には、よく通ったものだ。
一人で考え事をする時にも訪れたし、真太郎と他愛のない話をするときはいつもここだった。
公園へ入ると定位置であるベンチに真太郎が座っていた。
「やあ、真太郎」
「……久しぶりなのだよ」
「そうだね。はい、おしるこ」
公園の近くにある自販機で買ったあたたかいおしるこを渡す。
真太郎は少し微笑んでそれを受け取った。
「ふふ。僕の誕生日だというのに、保護者つきかい?」
「な……っ」
この公園には二つ入り口がある。僕が入ってくるとき、めざとくそれを見つけた鷹の目少年が反対側の入り口から出て行ったのが見えた。
どれだけ心配されているんだろうね、この大男は。
「いい。許してあげるよ、真太郎」
「……高尾はいいやつなのだよ」
「知っているよ。お前からちゃんと話は聞いているからね」
今更僕に相談していたことに恥ずかしがったのか、顔が真っ赤に染まる。
中学時代の鉄仮面からは想像できないような反応だ。
こいつも丸くなったな、本当に。
「そんな話はいいのだよ。次は最後、ここなのだよっ!」
「はいはい」
怒りながら紙を渡してくる真太郎を笑いながらそれを受け取る。
開いてみると、懐かしい字で【僕と君が出会った場所】と書かれていた。
――こんなの、簡単すぎるよ、テツヤ。
「早く行ってやるのだよ」
す、と出してきた一輪の緑色の薔薇。
それを受け取って、僕から真太郎へキスを返した。
本来は自分がする側の設定だから驚いたのか、目を見開いてそのまま固まってしまった。
「隙がありすぎるよ、真太郎。だから彼もお前を放っておけないんだ」
どこかで見ているであろう彼にたっぷり可愛がられればいい。
僕が立ち上がって、真太郎が頬を手で押さえながら真っ赤な顔して叫んだ。
「あ、赤司なんて誕生日なのだよおおおおおおおっ!」
「はは、意味がよく分からないよ真太郎」
可愛い友人に背を向けて、僕は走り出した。
:グリーンローズ
緑色の薔薇の花言葉:
永遠の愛
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