赤司誕生日小説 | ナノ






東京駅で敦と別れた僕は、指定されたコンビニへと足をのばした。

……冬だというのに、アイスを食べるのだろうか。僕は個人的に肉まんが食べたいのだが。

あの黄色い犬はきっとアイスを買って待っているだろう。

その姿が容易に想像できて笑えてきた。


「あーっ!赤司っちいいいいいい!」


まだ昼前で人も多いというのに、そしてあいつは少なからずモデルだというのに人目もはばからず僕の姿を見て叫んだ。

ぶんぶん振られている両手にはしっかりとアイスが握られていた。……やっぱり涼太は馬鹿だ。


「ちゃんと来てくれたんスね!!あ、はい!赤司っちの分のアイス!」

「涼太、今は冬だ」

「え?冬でもアイス食べてたじゃないっスかぁ!」

「……僕の記憶では肉まんだった気がするよ」

「あれ!?青峰っちとよく食べてたから皆もそうだと思ってたっス!」


まあ、涼太がアイスを買うことは目に見えて分かっていたことだ。

僕はそれを受け取り、アイスの袋を開ける。

中学時代散々食べた青色のアイス。ゴリゴリくんを寒い中外で頬張った。


「寒いけど美味いっスね、赤司っち!」

「まあ、悪くはないな」

「赤司っちと二人でアイス食べるとか初めてじゃないスか?へへ、俺嬉しいっス」


隣でアイスを食べている涼太を盗み見れば、耳や鼻の頭を真っ赤にしてへらへら笑っていた。

ああ、そういえば涼太のこういう笑顔に僕達は何度も救われたんだ。

才能が開花してから同じチームにいても離れているような僕たちを、こいつは変わらず仲を保とうとしてくれていた。

うざいうざいと言いながらも、僕達はちゃんとお前を好きだったんだよ、涼太。


「赤司っち、次はここっスよ!」

「……ストバス場か。大輝らしい」

「え゛、分かっちゃったんスか!?」

「これで分からなかったらサルだ」


そうっスよねぇ、と言いながら涼太は自分の脇に置いてあった黄色い薔薇の花を一本取り出す。

昔と変わらない笑顔で、それを差し出した。


「俺にとって赤司っちは、ずっとずーっと友達っスよ!!」

「……ああ、僕もだよ」


さきほど敦にもらったときと同じように薔薇に口づける。

敦がキスしたほうとは別の頬に涼太もキスしてきた。


「誕生日おめでとうっス、赤司っち!」


食べ終わったアイスのごみを捨てて、僕は次へと足を進めた。



:イエローローズ

黄色の薔薇の花言葉:友情







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