∴ 不可抗力 ※セーラー服と生クリームの二人です 1月1日 午前10時 オレは真ちゃんと初詣に来ていた。 長い列に並んでようやく賽銭箱に十円投げ入れて、願い事を頭に思い浮かべた。 列から離れて真ちゃんに何をお願いしたのか聞いたが、言ったら意味がないだろうと冷たくあしらわれた。ごもっともなのだよ。 「真ちゃん甘酒配ってるよー」 「……俺は駄目なのだよ」 「そういえばウィスキーボンボンで酔った可愛い子だもんね!」 「うるさい!貰いたいならさっさと貰ってこい馬鹿尾っ!!」 ばしん、と頭を弾かれてからオレは甘酒を配っている人の元へと歩みを進めた。 ちらりと真ちゃんを見ると、巫女さんからおみくじを引いているところだった。 オレは甘酒をカップ一杯貰って、おみくじの紙を広げた真ちゃんの元へ帰る。 「おみくじどうだった?」 「大吉なのだよ」 「さっすが真ちゃん」 当たり前なのだよ、と笑った真ちゃんはまた折りたたんで財布へしまった。 「んじゃ、飯でも食いに行きますか」 「ああ」 どこ行きたい?と言いながら後ろを歩く真ちゃんを振り返りながら尋ねる。 この人が多い場所でこんな不用意なことをしてはいけなかったが、後悔しても遅い。 真ちゃんを振り返った瞬間、オレは後ろの人にぶつかってしまったのだ。 「うわっ」 「!?」 ばちゃ、と音がした。 オレも、目の前にいる真ちゃんも目を見開く。 オレが握っていた紙コップを見ると、入っていたはずの中身が全部なくなっていた。 目の前の真ちゃんが濡れている。――やばい、酒ぶっかけた。 「し、真ちゃん大丈夫!?」 「……大丈夫に見えるのか」 「見えないっすね……」 とりあえず、目に入らなくて良かった。眼鏡があったのが唯一の救いだ。 いや、救いでもなんでもない。 「ひゃか、おぉ……」 「真ちゃん、帰ろっか」 甘酒って酔わないんじゃねえの!?という疑問が頭によぎったが、甘酒にもほんの少しアルコールが残っている場合がある。それにあたってしまったのかもしれない。ていうかもしかして酒かすから出来てたやつだった!? ……まあ要するに、真ちゃんは既に酔ってしまったのだ。下戸すぎるにもほどがある。そしてオレは飲んでないからセーフだろう。 「らめ、ひとりじゃたてないのらよぉ」 「分かった分かった」 頬をほんのりピンク色にさせて、瞳をうるうるさせた真ちゃんが手を伸ばしてくる。 オレは紙コップをつぶしてゴミ箱に捨てて、オレは鞄の中に入れていたハンカチである程度拭いてから手を伸ばす真ちゃんを立たせた。 「かえるの?たかお」 「帰るの。真ちゃん家に送ったら寝なさいね」 「たかおいっしょいないの?」 「い……いたら寝れないよ真ちゃん」 酔ってる真ちゃんの破壊力はんぱねええええ……っ オレが手を引いて歩いているから声をかけられることはないが、ちらちら人が真ちゃんを振り返るのが分かる。一人だったら危なかった。 「真ちゃん電車。ちゃんとオレに掴まっててね」 「わかってるのらよ」 「うん……っ」 ぽわぽわしてる真ちゃんを壁際に寄せて、オレが前に立つ。 電車の中も人が多くてぎゅうぎゅう押される。やばいオレ潰されるかも。掴まっててとかかっこいいこと言うんじゃなかった! 「ひゃら、たかおぉ」 「ん!?」 片手を壁について真ちゃんを守っているオレの服をくいくい引っ張りながら、やだやだと首を振っている真ちゃん。 オレ何かした? 「てぇ、あたってるのらよぉっ」 「ふぇっ!?」 そういえばもう片方の手に違和感がある。 少しだけかたくなっているこの感触は、真ちゃんのだったのか。 「や、らぁ!」 「ちょ、真ちゃんしー!これ仕方ないから、ね?不可抗力なんだって」 「たかぉ、さむいのらよぉ」 「寒い?ああ、甘酒…まだ滴ってるし……」 「なめて、たかお」 「ええ!?」 ――ああ、もうオレも毒されてんなぁ。 オレは動かせない片手で、そのまま真ちゃんの反応してきているチンコをやわやわ揉んでやる。 ぐっと近づいてしっとり濡れている真ちゃんの首元を舐める。しっかりと甘酒の味がした。 「たかお、がま、できな……っ」 「……次の駅で降りようね」 もう電車には乗れないかもしれない。 :不可抗力 今年一発目!甘酒ネタでした。 甘酒で酔う事…ないと思うんですが…ね。いいじゃない! 真冬様、多分思っていたリクエストと違うとおも…わたくしもこんなことになるとは…! 素晴らしいリクエストありがとうございましたっっ! |