∴ この二人、精霊馬コンビである 「緑間ってさ、まじ意味わかんなくね?」 それを聞いたのはちょうど紫原と階段をおりているときで、放課後で静まった踊り場に響いた声はどうにも誤魔化しがきかなかった。 俺はまたかと思いつつも焦っていて、紫原の腕を引いて逆戻りしようと思ったがそれは叶わなかった。 「いつも持ってる得体のしれないもん?あれなに?」 「ラッキーアイテムらしいぜ。まじ電波ちゃんだろww」 踊り場で人の悪口を言わないでほしい。傷つくより先に心底焦ったのだ。 赤司は俺が陰口を言われているのを知っている。知っているが何もしない。俺がそっとしておいてくれと頼んだからだ。 だが紫原には事実を伝えていない。なぜならこいつは短気だからだ。 「む、らさきばらっ」 小声で名前を呼びながら紫原の腕を引っ張るが、返ってきたのは紫原が所持していたお菓子の袋。 俺の腕からするりと抜けて、踊り場へ姿を消す。 押し付けられたお菓子の袋を握りしめて、俺も階段をおりた。 「さっきの、言ったのどいつ」 上級生が三人。それに対峙する紫原。 ゆらり、と立っている紫原の威圧感に言葉が出ないのか上級生たちは顔を引きつらせている。 「いい、紫原」 「よくねーし。だって何でみどちんなんもしてねーのに陰口言われなきゃいけないわけ?」 「お前が怒ってくれる気持ちは有難いが、問題を起こすのはよくないのだよ。それに、俺は別に気にしていない」 だから、と紫原の腕を引っ張る。 俺を一目見て、上級生を睨みつけながら壁を蹴りつけた。 まるで青峰じゃないか……と思いながらその様子を見ていた俺の手からお菓子の袋を奪い、俺の腕を引っ張って階段をさがる。 「……赤ちんは知ってるんでしょ?」 「まあ……」 「なんで俺には言ってくれないわけ」 「それは……」 人気のないところまで来て、いきなり俺は壁に押さえつけられた。 ばさ、という音がしてお菓子の袋が床に落ちる。ああ、中身が飛び出してしまった。 「俺ってみどちんに頼られてないってこと?」 「そういうことじゃないのだよ!」 「じゃあ、なに?何で俺に教えてくれないの。みどちんが一人で耐える必要なくない?」 じりじりと追いつめられる。 目を合わせているのが気まずくなって視線をそらせば、顎を掴まれてもとに戻された。 「俺は……その……」 「はっきり言いなよ。みどちんらしくない」 「お前に……心配を、かけさせたく、なくて……」 黙っていたのだよ、と語尾が消え入りそうなほど小声で言えば、顎を掴んでいた手を離してそのまま俺に抱き着いてくる。 抱きしめる力が強い。強いんだが。 「みどちんって時々どうしようもないくらい馬鹿だよねぇ」 「う、うるさいのだよっっ!!!!」 「心配とか、言われない方がかかるし。やめてよそういうの」 「そうは言っても……」 「俺はみどちんのこと守ってあげたいし、心配もしてあげたいのー」 きっと今の俺は真っ赤だ。どうしようもないくらい。もう嫌だ、顔が熱い。 「ねぇ、みどちん。お菓子こぼしちゃったからコンビニデートしようよ」 「……赤司に怒られてしまうのだよ」 「赤ちん俺には弱いから〜」 大丈夫だよ、と囁かれたそのコトバに、ひどく安心した。 :この二人、精霊馬コンビである。 すみませんタイトル全く関係ありません。 沙紀様、このたびはリクエストありがとうございましたああ! 紫緑…こんなんなのか…? |