「よう、あんたが江戸一番美しいって妖狐かい?」

「、貴方は」

「俺は奴良鯉伴。あんたは?」

「御狐神、双子」

「そうかい……綺麗だな」


彼は両手で私の頬を包み、親指の腹で瞼をなぞってくる


ドクン…、と胸がざわついた
知ってる知ってる…!私はこの景色を、知っている
この手を私は待ち望んでいた?


でも私も、先の自己紹介で分かるように彼も、お互い初対面
前世……もしかして夢に出てくる彼は、前世の彼(このひと)?
前世の私と前世の彼が出逢っていたのだろうか


「どうした?泣きそうな顔、してるぜ」


情けない顔をしていただろう私を彼は抱き締める

彼の腕の中で、夢の中の彼はこの人だという自分の考えに私は納得した
納得はした、けど何故だか違和感を感じてしまう



けれど私はその違和感を深く考えることをしない
前世のことだから、と勝手に自己解決させて考えることを放棄し目の前の彼の、鯉伴様の温もりに涙を溢す


目を見開いた鯉伴様だったが直ぐに柔らかく微笑んでくれて涙を拭ってくれた


きっと、この人だ
私なんかの為に涙を溢し愛してくれたのは、きっと前世の鯉伴様

だって温もりも涙を拭う指先も、汚れのない綺麗な金無垢の瞳も全て、こんなにも似ているのだから

きっと、この人だったんだ



やっと、やっとお会い出来た
前世の想い人

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