初めて見た時、恋をした
さらさらの銀色の髪、儚げで憂いを含む表情、何より、左右で違う色の瞳
その瞳に見つめられ、自分は彼女に惚れるのだと漠然と思った



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「よう、あんたが江戸一番美しいって妖狐かい?」

「、貴方は」

「俺は鯉伴。あんたは?」

「御狐神、双子」

「そうかい」


二人は出会った
そして男は恋に落ちる


「なぁ、親父」

「馬鹿息子か、どうした」

「惚れた女が出来た」

「そうか……聞いたかお前等!鯉伴がついに嫁を貰うらしいぞ!」

「「「ウオォォオオォ」」」

「なっ!親父ッ」

「ついにお主も腰を据える気になったんじゃな、良かったよ」


けどそれは噛み合わなくなった歯車の物語の序章に過ぎない


「私は転生する狐です」

「へぇ」

「前世の記憶はありませんがその時も、貴方みたいに私の所に通って手を差し伸べて下さった方がいたような気がするんです」

「その時、あんたはその手を取ったのかい?」

「…………分かりません」


美しい狐は前世の記憶がなかった
それがすれ違いの始まりでもあった


「来い!」

「鯉伴、さま」

「俺が連れ出してやらぁ!前世なんざ関係ねぇ!俺は今のあんたに惚れてる。だから今の気持ちで応えろ!今のあんたがこの手を取れっ!」

「鯉伴さま…っ」


彼女はその手を、取った
取ってしまった


「…っ………」

「親父、紹介する。前に話した俺が惚れてる女だ」

「初めまして、ぬらりひょん様。御狐神双子と申します」


何故、彼女が自分の息子の隣にいる?手を取り合って幸せそうに微笑み、なんと言った?


噛み合わない歯車は動き出した
もう止まらない、何処までもぐるりぐるり廻り続ける
それが、哀しくも美しい妖狐を取り巻く物語の始まりだった

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