ずっと籠の鳥だった
ずっと外の世界に憧れていた
ずっと自由が欲しかった
ずっと現状を変えられる筈がないと諦めていた

ある日突然現れた"自由"を象徴するかのような人

差し伸べられた手を掴むことが出来なかった

















私の部屋に誰かが出入りしていると家の人達にバレて、私は部屋を変えられた
そして私が逃げ出すのではと恐れた家人達に殴られ足を折られた
鎖が幾重にも腕、首、足、躯に巻かれ、身動きも取れない

痛みも麻痺しているのか、何も感じなかった
心も死んだのか、もう何も


「、り、はん…さま」


涙が溢れた
諦めていたんだ、諦めていた筈なのに
憧れ欲した"自由"に触れて私が彼に惹かれるのは必然だった


もう逢えないかもしれない
それがこんなにも心苦しいなんて
いっそのこと死んだ方がましだ
痛みも苦しみも哀しみも虚しさも、愛しさも何もない世界にいきたい

頭ではそう思うのに裏腹に助けてと叫ぶ心


殴られて可笑しくなったのかしら
自嘲気味に笑う


「、双子?」

「…ぇ………」


鯉伴、様


「双子!!?大丈夫か?!」

「ぁ、」


なんでここに


「あんたの部屋に行ったけどいなかったから探してみたら、なんだよこれ」

「っ」

「なんで、なんでだよ!!!!!」


悔しそうに叫ぶ鯉伴様
もう、いい
私の為にそんな悔しそうな顔をしてくれる愛しい人がいるだけで、私は幸せだ。どんな苦痛の中でも生きていける


「わ、たしが、先祖返りだから……仕方ないのです」

「先祖返りだから、なんだ」

「っ、鯉伴様?」


私を捕らえていた鎖が鯉伴様によって解放される
荒々しい口調とは違い壊れ物を扱うかのように抱き起こされた


「来い!」

「鯉伴、さま?」

「俺が連れ出してやらぁ!先祖返りなんざ、前世なんざ関係ねぇ!俺は今のあんたに惚れてる。だから今の気持ちで応えろ!今のあんたがこの手を取れっ!」

「…っ……鯉伴様!」


差し伸べてくれる優しい大きな手
私には眩しすぎる人
ずっと欲した自由が私を求めてくれる
愛しい人、愛しい鯉伴様


だけど


「おい、貴様か。最近双子様に付きまとっていたのは」


家が許さない


「一族揃ってお姫様を監禁たぁ随分なご趣味で」

「双子様は我々御狐神の家に繁栄を齎すお方。連れては行かせん!」

「双子」


鯉伴様は御狐神の人を睨みつけたまま私に問う


「どうして欲しい」

「え」

「俺に求めろ。俺がお前の望みを全て叶えてやる」

「、」

「言えっ!!!お前が自分で選べ!!俺は絶対に負けやしない」

「鯉伴様……私を、ここから…っ……連れ出して下さい!」

「りょーかい」


ニヤリと笑った鯉伴様の行動は早かった
私を姫抱きに抱え畏れを使ったのか邪魔されることなく外に出る

そのまま逃げるのかと思ったが鯉伴様は御狐神家の屋根に上った


「聞け!御狐神の家の奴等!」

「おい、いたぞ!彼処だ!!」

「御狐神双子は奴良組二代目のこの俺が貰い受ける!」

「―――ッ!!??」

「奴良組だと?!」

「それでもまだ双子を連れ戻そうとする奴等は奴良組を敵に回すと思え」


いつもの優しい目ではなく、冷たく相手を射殺すような鋭い双眸

これが、奴良組二代目の鯉伴様


「行くぞ、双子」

「……鯉伴様」

「ずっと俺に付いて来い。一緒になるぞ」

「はいっ」


幸せの涙を幾筋も流れ落ちる
鯉伴様、私はいつまでも貴方に付いて行きます
前世からお慕いしているからじゃない
今、私を救って下さった貴方だから、鯉伴様だから


「ずっと、お傍にいさせて下さい」

「勿論。離さないさ」



そして出会った彼の父
目を見開き愕然とした面持ちで私を見詰める
懐かしさと悲しみと愛しさが混ぜあったような揺れる瞳


そして何故か懐かしいと切なくなった私の心





噛み合わない歯車を無理矢理動かし続けた先にあるのは喜劇か悲劇か

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