ミネ成代。名前固定



「さむい…」


ハァ、と白く漏れる吐息
キラキラと光るイルミネーションの前で私は一人待ち惚け


折角彼が一日時間を空けてくれたのに私にバイトが入っていたせいで彼と会う時間が夜の7時からになってしまった
だから不安になる
やっぱりクリスマスにバイトだったなんて呆れちゃったかな、私捨てられちゃうのかな


なんてマイナスに考えてしまう思考を否定するように頭を左右にブンブン振った


「来たら温かい飲み物買ってもらうんだから」


ハァ、息は白く吐き出され空気に錯乱する

いい加減、来ないかな


そんなことを考えている時後ろからぽんっと肩を叩かれた


「もうっ遅……、」


振り向き見た顔は愛しい彼の顔ではなく知らない男が二人
ハァ、先程とは違う息を吐き出した


「うっわ!君かわいいね」

「こんな所でずっと一人なんて、ナンパ待ち?」


……………………。
このイルミネーションの下で可愛く着飾った女の子が健気に彼氏を待っている姿をナンパ待ちなんて言われて腹が立つのか悲しいのか惨めなのか
涙が滲みそうになる


「なら話早いじゃ〜ん」

「ほらほら、行こっか」


痛いくらい腕を掴まれて思い切り引っ張られる
そこで私は漸く我に返った


「や、やめて下さいっ…離して」

「やめて下さいだって〜」

「かぁーわいいねぇ」


あぁもう何処の少女漫画よ!
私が本当にヒロインなら、ここでヒーローの如くカッコ良く彼氏が助けてくれるのに…っ



もう!早く来てよ、シン!


「ねぇ、あんたら何してんの」

「あぁ?誰だよ、もしかしてこの子の弟くん?」

「なんだよ、ガキがカッコ付けてんじゃねぇーよ!」


後ろから聞こえた声に固まってしまった


本当に、来た


「シ、ン」

「っ、こいつ、俺のだから」

「はぁ?なんだ」

「さっき警察呼んだ」

「なっ」

「もう直ぐ来るんじゃない?」

「チッ、おい行くぞ」

「あ、あぁ」


シンの登場にも強気でいた男達は警察と言う言葉に臆したのか走って逃げていった


「ありがとう、シン」

「………………」

「でも遅い!!寒かったんだから後で温かい飲み物買ってよね、ってちょっと、」


いきなりシンがキツく抱き着いて来た
ぎゅうぎゅうと僅かな隙間なんか許さないかのように痛く、強く


「どうしたの?」

「なんでっ」

「ん?」

「なんで弟なんだよ…っ」


同い年なのに、彼氏なのに
そう呟くシンが悔しそうで、悲しそうで、愛しくなった


「シン」

「、悪い…情けないよな」

「いいよ。私はシンが大好きだよ」

「っ」

「今のままの、シンが好き」

「俺も、」

「うん」

「俺もお前が大好きだ」

「うん……ふふ」


綻ぶ私の唇を笑うなとでも言うようにシンが奪う
最初は優しく、どんどん熱く深くなる口付け


さっきまで憎らしく見えたイルミネーションもシンがいてくれるだけでキラキラと綺麗に見える私はなんて単純なんだろう





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