「お願い、書いた?」

「琉生は?」

「うん、書いたよ」


琉生の店先にひっそりと飾ってある笹の葉
お店の人達が飾ったのか色とりどりの短冊と折り紙の飾り


私も琉生に誘われて書こうとはしてるが何も思い付かない


「と言うより、いるかも分からない二人に願い事するなら自分で叶えるんだけど」

「僕、そういうところ好き」


意味が分からない
普通男ってこういうのキャッキャッやる女の方が可愛く見えるんじゃないの?
いや、自分が可愛いげがなさすぎるのか

でも琉生はにこやかに私を見ていた


「琉生はなんて書いたの?」

「これ」


すっと自分の淡い黄色の短冊を目の前に差し出される
咄嗟に取り視線を落とせば



「私が、幸せになりますように……?」

「うん。ずっと昔から、僕の一番のお願い」



もしかして毎年こんな願い事を書いていたのか
バカじゃないのか、自分のことを願わないで、人の、こんな性格悪い妹の幸せを願うなんて


「僕の願いが、星に届きますように」


優しく抱き締められた琉生の腕の中で私は確かに幸せを感じたかもしれない



そっと短冊に書かれた私の願い



『琉生が幸せになりますように』



琉生が私のことを願うなら、私は琉生のことを願ってあげるよ



バニラのように甘く
君の幸せを願うのは昔から僕の役目


七夕の「ば」



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