「もし君が織姫で僕が彦星だったら、君はどうする?」


彼からの質問はいつも突拍子もない
何が正解で何が不正解か、彼にはそんなもの存在しない
彼が面白ければ、愉しければ、それが答えなのかもしれない


「そうですね……私は恋人にかまけて仕事をしないなんてしませんので、一年に一度しか会わないなんて状況には決してなりませんよ」

「アハッ!織姫と彦星の大前提を思いっきり否定したね」

「雪柳先生はどうしますか?」

「んー、僕?」


笑顔を浮かべながら頷けば雪柳先生は顎に人差し指を突き立て悩む仕草をする


「僕も同じかなー…」

「私の答えと、ですか?」

「うん。君に会えなくなるくらいなら真面目に仕事するよ」

「、」

「それでも君と引き離されるなら」


一瞬で彼の雰囲気が変わった
明るく和やかな雪柳先生が、私が瞬き一つした瞬間、狂気を瞳に宿し凶悪な何かを潜めたような笑みを浮かべていたのだ


「引き離そうとしたヤツ」

「………雪柳先生」


ふわりと攫われた一房の髪の毛
ちゅ、と音を立てて口付けられる


「ころしちゃおうかな」


いつものように「アハッ」と笑う無邪気な笑顔
でもその瞳は相変わらず狂気を秘めていて、アンバランスな彼にゾクリとする


何気ない日常を
邪魔する奴は誰であろうと僕は許さないよ


七夕の「な」



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