突発的な話 | ナノ



1



「林檎ちゃーん!」

「きゃっ」


後ろから勢いよく抱き着いて来た音也くんに前のめりに倒れそうになるが音也くんが後ろから抱え込む様に支えてくれて何とか持ち直せた


「ちょっと音也くーん?」

「ごめんね、林檎ちゃん」

「なら離しなさい」

「やだ!」


元気よく拒否する音也くんに頭を抱える
この子はどうしてか私に酷く懐いていて私を見掛ける度に体当たりの如く抱き着いて来るのだ


「んー…林檎ちゃんいい匂い、それに柔らかいしあったかいや」

「音也くんそれセクハラよ」


私の頭に顔を埋めてすりすりと鼻先を擦り寄せる
その仕草が犬みたいで可愛い、なんて思ってしまう


「もー…なんで林檎ちゃんってこんなに可愛いの」

「音也くんのが可愛いわよ」

「…、……」


ぴたり、音也くんの動きが止まった
不思議に思い首を傾げているとぐんっと肩を後ろに思い切り引かれる


「っ」


ダンッと辺りに大きな音が響いたかと思ったら背中に鈍痛が走った

はっと音也くんを見上げると彼には似つかわしくない艶のある笑みを浮かべていて、私を逃がすまいと両腕が後ろの壁に付かれていた


「お、とやくん?」


ドクドクと心臓が騒ぐ
ガンガンと頭の中で警報が鳴る

この腕に捕らわれていてはいけないと


「こーら。悪ふざけもいい加減にしなさい」


だから私は教師の仮面を被る
彼から向けられる甘やかな瞳には気付かぬ振りをして


「ほら、音也く「ねぇ、林檎ちゃん」、」


音也くんが私の言葉を遮る
そして鼻先がくっつきそうなくらい顔を近付けて来て、動けば触れそうな距離にある唇に動きを止めざるおえなかった


「これでも、俺を可愛いって言うの?」

「、」

「俺が本気出せば林檎ちゃんにキスなんか簡単に出来るんだよ」

「音也くん落ち着きなさい」

「林檎ちゃん」


音也くんの手が私の頬を包み込む
私の手より遥かに大きな手

近付けられる端整な顔、抵抗してもびくともしない身体
それらが私に彼を『男』だと認識させる


もうダメだと思い来るであろう口付けに覚悟しぎゅっと目を瞑った



が何時まで経ってもその衝撃は来ず、恐る恐る目を開くと音也くんは私を見つめているだけ



「期待した?」

「なっ!?わけないでしょ!」

「ちぇー残念」

「残念って、音也くん」


ちゅ、
頬に柔らかな温もりが触れ可愛いリップ音が辺りに響いた


「〜〜〜!」

「怒らないでよ!此方は我慢したんだから」


つぅーと唇をなぞる音也くんの男らしい指先
何だか振り回されている気がして噛んでやろうかとも思ったけど、大人気ないような気もして我慢する


「ねぇ、林檎ちゃん」

「なーに」

「俺、可愛い生徒のままでいるつもりないから」

「…、……」

「林檎ちゃん、俺」

「そろそろ授業始まるわよ」

「、」

「早く行かなきゃ遅刻しちゃうわ…ほら、行きましょ?」

「…………うん」


私は狡い大人だ
でもこの子の、可愛い生徒の未来を潰したくない
そもそもヒロインはハルちゃんなんだから、
今はこの年頃の子によくある年上に対する憧れを恋と勘違いしているだけ

いつか皆の気持ちはハルちゃんに向かうだろうし恋愛禁止令がある、しかも先生と生徒、はぐらかすしかない


「……俺、本気なのに」


そんな台詞も聞かない振り























林檎ちゃんが色々気にしてくれているの俺知ってるよ?
だけど俺そんなことじゃ諦められない
林檎ちゃんのことが大好きなんだもん
林檎ちゃんさえいてくれれば他はいらない
林檎ちゃんが欲しい、林檎ちゃんだけが欲しい
優しくて温かくて笑顔が可愛くて、太陽みたいでひだまりに包まれてるみたく傍にいると穏やかになれる
欲しいんだ、独り占めして誰にも林檎ちゃんの温もりを感じさせたくない
俺だけが林檎ちゃんの温もりを感じていればいい
ねぇ林檎ちゃんお願い
貴女が俺を包み込んでくれなきゃもう俺、辛いよ





―――――
音也ンデレ\(^o^)/
すみません!
天使でわんこな音也も大好きですが音也ンデレも大好きなんです!

あああ音也ファンの方本当にすみません(´;ω;`)

◇◆2011.11.18