突発的な話 | ナノ



4



お姉ちゃんが、好きな人

そうだ
なんで忘れてたんだろう

お姉ちゃんが彼のFCの会長だったことを

イッキさんが好きだから、お姉ちゃんは会長を務めているんだ


なんで、なんでなんでっ

それじゃわたし、むりだよ



私を大切にしてくれたお姉ちゃんの大切な人を私は奪えない

奪えない、から



















「ナマエ、最近大丈夫ですの?」

「、大丈夫って何が?」

「……酷く窶れましたね」

「…っ……大丈夫」

「ナマエ」

「大丈夫だから」


頑なに大丈夫だと言う私にお姉ちゃんは悲しそうな顔をする
でも私がイッキさんを奪ってしまったらもっと、お姉ちゃんを悲しませてしまうから

もう十分、夢見させてもらったから
だから、今度は私が我慢する

今までだって我慢して生きて来たんだから、ただ元の日常に戻っただけだ


大丈夫、私は『良い子』だから大丈夫






「ナマエ!今度一緒にお出掛けしよ!」

「お、久しぶりに幼馴染み四人で出掛けるのもいいね」

「俺予備校で忙しいんだけど」

「たまには息抜きも必要だよ!」

「じゃあマイが行きたい所に行こうな」

「本当!あ、ナマエもそれでいいよね」


まだ、何も言ってないのに勝手に纏まる私の意思とは関係ない幼馴染み達の会話
何時だってマイが中心で、マイの言葉は絶対

私はそれに笑顔で頷くことしか出来ない、それしか許されない















また始まった虚像のナマエの日々
苦しみも辛さも痛みも妬みも恨みも憎しみも悲しさも切なさも全部『良い子』の仮面の下に隠して笑う日常



イッキさんと離れてしまって元の日常に戻っただけなのに、甘えられる優しさと頼っていい温もりを知ってしまい失った私はどこか壊れたみたい


すー、と腕に赤の線を引く
ぷくり、浮き上がる紅
またやってしまった

けど私はこの『アカ』に落ち着きを覚えてしまったんだ



ねぇ、誰か、たすけて



もう、つかれたよ



ずぷり、いつもより深く、切ってしまう
じわりじわり溢れる赤をどこか他人事のように見ていた、とそんな時



「ナマエ!!!」



荒々しくドアが開く音に次いでお姉ちゃんの悲痛に私を呼ぶ声が聞こえた
だけどもう意識が霞んでいる私には、お姉ちゃんの姿を捉えることは、できなかった



「ナマエ!しっかりして下さいましっ!ナマエ、」



ぽたり、ぽたり頬に伝う冷たい雫を感じたのを最後に私の意識は闇に沈んでいった





















「ナマエ!?」


先程まで確かに開いていた瞳が今は閉じられ、彼女の身体は私の腕の中でぐったりとしている


どうしようどうしようどうしようどうしよう


可愛い、妹が
たった一人、いつでも無条件に私を慕ってくれた妹が
いつも我慢を強いられ甘えるのが苦手で、本当は私が真綿に包むように甘やかして大切にしたかった可愛い妹が


やっと甘える人が出来たと思ったのに、なぜ


「っイッキさま」


私は直ぐに傍らにある携帯に腕を伸ばした
そこからイッキ様の名前を開き電話を掛ける


「(イッキ様!お願いです、早く出て下さいましっ)」

「……もしもし、リカ?」

「イッキ様!」

「わ、吃驚した…どうしたの?何かあった?」

「助けて下さいましっ…ナマエが、ナマエがっ」

「っ、リカ落ち着いて!何があったか説明して」

「…、…ナマエが、手首、切って……ぐったりとしているんです」

「な」

「イッキ様、助けて下さいましっ…」







ねぇ、ナマエ
君に何があったの?

最近僕を避けてるのは、戸惑いからだと思ってた
けど、違ったんだね
何か他に、君を苦しめるものがあったんだ

甘えるのが苦手な君が、頼ることを知らない君は
心で必死に助けを求めていた筈だ


もう目を離さない
僕がナマエの微かな変化にも気付いてみせるから


だからどうか、無事であって





―――――
シリアスだなー…

少し補足
幼馴染み組は溝を埋めようと必死なだけです
幼馴染み組は自分達が笑っていればヒロインも笑ってくれる
ヒロインの幸せは自分達と同じようにお互いにあるって思ってます…うん自信過剰ですね←

てか、あれ?これで完結させるつもりだったのに
あと一、二話続きます(多分)


◇◆2011.11.04