突発的な話 | ナノ



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「シエル様ー?」

「……、………」

「シエル様何処ですかー!?」

「はぁー…」



ヤツが煩くてゆっくり読書も出来ない
暫く様子を見て彼が諦めて去るのを待っていたがいつまで経っても諦める様子もなく、逆に私が諦めた

ぱたん、と読んでいた本を閉じ隠れていた花園の一角から姿を見せる
そしたら捨てられた仔犬の様な目をして私を探していたルカはパァッと目を輝かせて嬉しそうに駆け寄って来た

一瞬、嬉しそうに振られる尻尾が見えた気がした私は頭を抱えて溜め息を吐く


「シエル様、どうかなさったのですか?!」

「いや、気にしないで」

「ですが、」

「ところで貴方はお嬢様を放っておいて私を探していたみたいだけど何の用かしら?」

「お嬢様は只今巡回中です。あぁ私の仕事のご心配をして下さるなんてシエル様は何とお優しい」


跪き、ぎゅっと手を握りながら見上げられた
キラキラ視線が鬱陶しくげっそりとしてしまう


「それで、用は」

「実はシエル様にリモーネパイを焼いてみたんです」

「、リモーネパイ」

「はい!是非食べて下さいませんか?」


ルカのリモーネパイは絶品だとあのジョーリィさえも褒めていた
食べてみたい、すごく食べてみたいが絶対セバスチャンに怒られる
ヤツは自分が作った以外の物を私が食べるのを酷く嫌がる


悶々と悩んでいると、スッとルカの手が私の頬に添えられた
そしてちゅ、と寄せていたであろう眉間に口付けられる


「、おい」

「そんなに悩まないで下さい…一口だけでいいんです、食べて下さいませんか」


シエル様の為に作ったんです、なんて懇願され、私はまた溜め息を吐いた
















「どうぞ召し上がって下さい」

「えぇ、ありがとう」


にこにこと笑うルカを尻目にリモーネパイを一切れ掬う


「ストップ」


口に運ぼうとしたパイを止められた


「セバスチャン」

「全く、お嬢様は学習しませんね」

「、」

「従者、これには媚薬(惚れ薬)効果があるものがふんだんに使われているようですが?」

「お、美味しく作ろうとしたらそうなったんです!」

「そうですか?まさか貴方が作った薬を入れてはいませんよね」

「…………えぇと」

「従者?」

「う、うわああああん」

「!?」


いきなりの泣き声に驚きルカに視線を向けると彼は椅子に座る私の前に座り込み足にしがみつく


「おい!」

「申し訳ございません!シエル様!」

「従者、お嬢様をお離し下さい」

「私なんかが調合した媚薬がシエル様に効くなんて思っていません!けれど、その瞳に私だけを写してくれたら、って、うぅ…っ思ってしまって、うわあああああん」

「分かった!もういい!鬱陶しい!」

「お嬢様の膝上で泣かないで下さい。お嬢様に触れないで下さい。お嬢様が汚れます」

「うあぁぁああぁあん」

「セバスチャン!余計に泣かしてどうする!」

「お嬢様もお嬢様です。再三私が作った以外のものを食べないで下さいと申し上げた筈です」

「、それは」

「お仕置き、が必要でしょうか」


にこりと凶悪に微笑む黒い執事
未だ私の足にしがみつき太股辺りを頬擦りしている他の女の従者



情けない従者の姿に今日何度目か分からない溜め息を私は吐いた





―――――
途中ルカが妖狐×僕SSの双熾っぽくなった…
ううん、シエル嬢のキャラもこれでいいのか迷子になった_(X3 」∠)_

次は誰と絡まそう
アルカナってジョーリィとルカ以外書くの不安だなぁ…
ジョーリィとルカは割りと動かしやすい、けど他のキャラって書いたことないからどうなんだろう……?


◇◆2012.03.29