突発的な話 | ナノ



可憐に嘲笑うお嬢様



「おい、離せ」

「ん、」

「聞いているの?」

「シエル嬢は甘いな」

「は?」


私をベッドに押し倒し、私の身体を覆い尽くすよう身を預けているのは先日からお世話になっているアルカナ・ファミリアの相談役であるジョーリィ

私が着ている服の首元を緩ませ、露になった首筋に顔を埋めて意味の分からないことを言い出した


「分からないか?…この匂いも、味も」

「ひゃっ」

「声も、シエル嬢の何もかもが、甘い……あぁ、君を、食べてしまいたいよ」


首筋を舐めあげたり吸い付いたり甘く噛みついたり、鬱陶しい


「やめてちょうだい」

「、」


彼の前髪を掴み力任せに引っ張りあげる
痛みに歪められた顔に嗤う

微かに、けれど明らかに欲情している双眸が目の前に現れたから


「ふふ、滑稽ね」

「シエル、」

「親と子ほど歳が離れている小娘相手に情欲を持つなんて、いえ祖父と孫くらい離れているかしら」


くすくすと嗤う私にジョーリィも笑い返す


「あぁ、そうだな。シエル嬢はルカの娘でも可笑しくない歳だ」

「ハッ、今さら」

「だがな」


ジョーリィの前髪を掴んでいた手を彼に掴まれ、両の手をベッドに縫い付けられた


「シエル嬢のその瞳が私を狂わせたんだよ」


す、と右目に覆われていた眼帯を彼に奪われる


「バカバカしい。人を狂わすのは貴殿の目だろう」

「そうだな、けどシエル嬢は狂ってはくれないだろう」

「それこそバカバカしい」


当たり前ではないか
そんな瞳如きでどうにかなる繊細な心は持っていないつもり


いつでも気丈で気高く誇り高い女王の番犬、それこそがシエル・ファントムハイヴがあるべき姿だ



「あぁ、だから私が捕らわれ狂わされた」



ジョーリィの言葉を鼻で嗤う
なんとバカバカしい執着だろうか

そっと優しく、だけど性急に自分に触れる手、自分が欲しいと強く語る双眸


ペロッ、と契約書がある右目の眼球をジョーリィに舐められた


「他の男が持つ印と同じだなんて、妬いてしまう」

「だからどうしたのよ」

「この眼球を捻り抜いてしまいたいな」


でもそうしたらデビトとお揃いになってしまうか、なんて心底残念そうに呟く男に笑みが溢れる


微笑みでもなんでもない、嘲笑が


本当に眼球を取るつもりなのかすっと右目に伸ばされる手
もう少しで触れる筈だった指先は目元に触れる前に制されていた



「そこまでです」

「…、……」

「遅いぞ、セバスチャン」

「申し訳ありません、お嬢様……ですが私に一声もお掛けせずに勝手に散歩をしていたのはお嬢様でしょう?」

「ふんっ」

「では、相談役。いい加減お嬢様の上から退いて頂けませんか」

「………………」

「………………」


無言で睨み合う二人
いや、セバスチャンは何時も通りの胡散臭い笑みを浮かべているが

あぁ、なんて邪魔くさい



―――――
アンケートで人気だったシエル嬢ネタ
書いてみたがなんか違う……なんか違うんだよ!!!<●><●>カッ!


ま、まぁお気に召して下されば、幸いっす


◇◆2012.03.10