突発的な話 | ナノ



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「棗」

「ん?」

「大晦日泊まりに言っていい?」

「は?」


一週間前に告げられた通り風花は大晦日に泊まりに来た










大晦日の夜23時


「良かったのかよ、今日俺のところに来て」

「んー…いーの」

「あとで椿と梓にどやされるのは俺なんだぞ」

「じゃ、今日いっぱいサービスするよ?」


ぺろりとネコみたいに唇を舐めてくる妹
次いで妖艶に微笑み下唇を甘噛みしてきた


「おい」

「なーに」

「今日はヤらねぇーよ」

「えー、カウントダウンえっちしよーよ」

「お前なっ」


押し付けられる柔らかい唇、急な事に対処出来なく驚いている隙に押し倒される身体


「ふふ、反応してる」

「、っ」


当たり前だ
好きな女に触られて、あんなキスまでされたのだから


「いっぱい気持ちよくしたげるよ」


その言葉を最後に俺達は快楽の海に溺れていった






―――――

――――

―――

――








「たんじょーびおめでとう」

「ん、あぁ」


腕の中の風花がもぞもぞと動き顔を上げたかと思うと可愛らしい笑顔と共に紡がれた祝いの言葉
時計を見たら0時03分
いつの間にか年が明け、自分の誕生日になっていたらしい



「さんきゅ」

「ううん。棗の誕生日を一番に祝いたかったから嬉しい」

「、」

「それから、あけましておめでとう。今年の始まりを棗と過ごせて良かった」


ぎゅっと音がなりそうな程抱き着いてくる愛する妹
本心からの言葉だろう
彼女の顔に浮かぶのは悪戯めいた顔ではないから

ただ純粋に自分を想う顔


分かっている
風花は兄として自分を慕っているのだと

男としてなんて見られてない
風花が俺に抱かれるのが好きなのは身体の相性がいいから

でも他の兄弟達より想われている自信は、ある


その証拠が今ある時間だ

椿や梓の誕生日より俺の誕生日を優先してくれる
新年を迎える瞬間を他の誰より俺と過ごしたいと言ってくれる


「風花」

「なに?」

「……好きだ」

「、ん」



愛してるんだ



告げようとした時、風花の携帯が鳴り俺はハッとして口を閉ざす

風花は不機嫌な顔で携帯に手を伸ばし画面を確認した


「仕事か?」

「ううん。椿兄から」

「なんだって?」

「初詣、皆で行くから帰っておいでだってさ」


何となく、嫌だと思った
何時もなら兄の顔をして送って行くか、自分も一緒に行くと言うかするのに

この時間を邪魔されたくないと、思ってしまった



ぐるぐると思考の中に沈んでいたら不意に辺りがまた暗くなる


「風花?」


暗くなったのは彼女が携帯の電源を落としたからだ

行かなくていいのか、と疑問を込めて名前を呼ぶが彼女は淡く微笑む


「いーよ。人混みとか行ったら面倒なことになりそうだし」


確かにそうだ
風花はアイドル
初詣なんて人混みに行ったら大変なことになるだろう
加えてあの兄弟達は目立つのだから


「だから、さ」

「…っ…おい!」

「姫初めシよ?」


風花は俺に跨がり首筋に顔を埋めると吸い付いてきた


「綺麗についた」


うっとりと俺の首筋を眺める風花の細い肩を掴み位置を入れ替える

そして彼女の鎖骨より下辺りに噛み付いた


「っ」

「煽ったのはお前だからな」


なるべく周りから見られない所に赤い華を散らしていく
胸元や足の付け根辺りだったり腰元に背中


艶やかな風花の声に煽られて自分の欲も高まってくる


「棗、」

「なんだよ…今さら止めないからな」

「んーん、棗」

「ん?」

「あとで二人で、初詣行こーね」


二人で


自分は単純なものだ
風花からのたったこれだけの言葉で気分が浮上するのだから


「あぁ、そうだな」


だから今は君の熱に溺れさせて



―――――
ハッピーバースデー棗!
絶対に攻略対象キャラになるって信じてます!!

◇◆2012.01.01