突発的な話 | ナノ



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「ナマエは本当に良い子だから助かるわ」

「貴女はしっかりしてるから一人でも大丈夫よね」



助けて、



「ほら、ナマエ。マイとシンの面倒は俺達が見ないと」

「ナマエちゃんのケーキのがいい!ちょうだい!」

「あのさ、お願いがあるんだけど」



だれか



「ナマエって頼りになるよね」

「本当、良い子って感じ」



たすけて



















「、」


微睡みから意識が浮上する
夢、いやな、ゆめ


「は、っ」


息が詰まる
頼られるしっかり者で皆の理想の私

甘えたがりでドジで泣き虫な私


誰も私の本質を見てくれない
家族も、幼馴染み達も



だれも



















「ナマエ、彼がイッキ様ですわ」

「初めまして、ナマエちゃん」


彼が、お姉ちゃんが心酔してるっていう、イッキさん

目が合った女の子を恋している気分にさせる(らしい)瞳


だけどほんとうに?


「、初めまして」


どう反応していいか分からない

いきなり質問をしても不躾だろうと思い、私の中に生まれた疑問をぐっと飲み込んだ


「あ、れ?」

「ナマエ、貴女効きませんの?」

「なにが?」


二人が吃驚したように私を見つめる
するとお姉ちゃんが黙り込み何かを考えるように頬に手を当てていた


「イッキ様、私少し用事がありますの。妹をお願いしても宜しいですか?」

「あ、あぁそれは構わないけど…」

「では失礼致します」


私が言葉を発する事もなくお姉ちゃんは颯爽と去って行ってしまった

初対面の、しかも男の人と二人きりなんて、と私は所在無く視線を泳がせてしまう


そんな私に気付いたのかイッキさんがくすり、苦笑した


「そんなに警戒しないで」

「あ、いえ…すみません」

「謝らないでよ。ねぇ本当に僕の目を見ても何も思わない?感じない?」

「えっと、」


じっと彼の瞳を見つめる
綺麗なアイスブルーの瞳


「とても、綺麗な色だと思います」


純粋にそう思った
微かに微笑んだ私にイッキさんは目を見開き驚いている様


「、……君の瞳は、酷く悲しい色をしているね」

「……っ…」

「それと」

「、」


イッキさんの少し冷たい指先がさらり、私の髪を掬う


「笑顔はすごく綺麗なのに切ないくらい儚い」


ちゅ、すくわれた髪に口付けを落とされた


「君は、ナマエちゃんは何に苦しめられているの?」

「…………」


今度こそ私は驚きに固まってしまう
初対面の人に、此処まで言われるなんて思いもしなかった


「あ、」


何か、取り繕わなければと思うのに言葉が出ない
言葉が出ない代わりに涙が、溢れだした


「ナマエちゃん」

「…ふっ、う…ぁ…」

「ナマエちゃん」


こんな、こんな不様な姿見せたくないのに
こんなの、皆が言う私じゃないのに


「よく頑張ったね」


優しく抱き締めるこの腕に身を委ねてしまった





―――――
駆け足過ぎる…´゚ω゚`
すみません(;;)アンケートで「是非!」ってあったので、つい調子に乗ってしまいました!

ううむ、意外と難しかったェ…

◇◆2011.11.02