突発的な話 | ナノ



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絵麻視点


「ただいま」


夕方、リビングに甘くて柔らかい声が響く
普段忙しくて中々家に帰って来れないあの子の声


「風花ちゃん!お帰りなさい」

「姉さん、ただいま」


自惚れかもしれないけど風花ちゃんが私を視界に入れた瞬間表情を和らげた様な気がした

それに表情を緩めると風花ちゃんも可愛く笑ってくれる



ずっと憧れだった妹
ずっと欲しかった妹
可愛い可愛い風花ちゃんが私の妹

一人ぼっちだった家がいつの間にか大家族になって、たった一人の妹が出来て、こんなに幸せでいいのかな



「今日、右京兄さんいないけど……姉さんがご飯作るの?」

「え、うん。そうだよ」

「……一人であの量って大変でしょ。何なら出前でも取る?私が払うからさ」

「そんなの悪いよ!、それに……」

「それに?」

「風花ちゃんが家にいる時はちゃんと栄養面がしっかりしたご飯食べさせてあげたいから」

「……………」

「あ、でも私の作るものより出前の方が美味しいもんね!やっぱり出前にしよっか」


普段ロケ弁だったり外食だったりと不摂生な食生活だって聞いていたからそう言ったが風花ちゃんからしたら迷惑だったかなと不安になり慌てて言葉を紡いで風花ちゃんを見ると


「、風花ちゃん?」

「っこっち見ないで」


真っ赤な顔をした風花ちゃんがいた


「〜〜〜〜〜っ(か、かわっ)」


すっごく可愛い!!


「、姉さん」

「な、なに?」


名前を呼ばれ風花ちゃんの可愛さに悶えていた私は声を裏返らせてしまった
でも風花ちゃんは自分の事に精一杯なのか、気にする風でもなく続ける


「私、姉さんの作ったものが食べたい」

「っ!うん!とびっきり美味しいの作るね」

「あ、あと手伝いたい」

「いいよ!私一人で大丈夫だよ?」

「違うの……私さ、姉さんと一緒に台所に立つのに…その、小さい頃から憧れてたっていうか……」


もじもじしながら無意識に私の服の裾を掴みながら必死に言葉を発する風花ちゃん
それが可愛くて、兎に角可愛過ぎて私の答えは決まっているようなものだ


椿「ちょっと梓!あれ見て見て!」

梓「椿、引っ張らないで…ってあれ台所にいるのって」

椿「そう!可愛い風花と可愛い妹ちゃん!何あの可愛い子達!」

要「本当、エプロン姿の可愛い女の子が二人も並ぶと花があるよね」

椿「あ、かな兄」

弥「わー!ふぅちゃんとお姉ちゃんだー!」

雅「こら、弥。今行ったら二人の邪魔になっちゃうから、ね」

椿「ていうか妹ちゃんいーなー!梓もそう思わね?」

梓「うん、まぁ…風花は彼女には特別甘いからね」

要「唯一の姉妹だから仕方ないんじゃない?」












「姉さん、これは」

「あ!風花ちゃんは包丁持たなくていいよ!傷付いたら大変」

「そんな、大丈夫だって」

「えっと此方やっといてもらえないかな」

「はーい」


















―――夕飯


侑「うっわ!何これ、ちょーうめぇ!」

祈「風花と君が二人で作ったんだよね?うん、すっごく美味しい」


ガツガツと食べる侑介くんと一口一口噛み締める様に食べる祈織さん


椿「可愛い女の子二人が作ったものを食べれるなんて、夢にも思わなかったよ」

梓「家は男ばかりだし風花は忙しくて家事とか時間がなくて出来ないからね」

要「そうそう、でも妹ちゃんがいると風花ちゃんは料理とか積極的にするようになったよね」


しみじみと幸せを噛み締める三人


琉「ふぅちゃん、すっごく美味しい」

弥「ふぅちゃん、お姉ちゃん!とっても美味しいよ!」

雅「風花もいつの間にか料理すっごく上手になってる。また風花が作ったもの食べたいな」

右「私の作ったものより断然美味しいです」

昴「……おかわり」


美味しい美味しいと沢山食べてくれる兄弟達

そして


「ったく、恥ずかしい人達…まぁ姉さんと一緒にならまた作ってもいいけど」


なんて照れ隠しで悪態を吐く風花ちゃん
頬を染めて、本当に可愛いな


右「確か明日は風花は休みでしたよね」

「あー、うん。でも朝は寝てるつもりだからご飯いらないや」

要「朝はちゃんと食べなきゃダメだよ?何なら俺が起こそうか?」

「いーよ…なんか朝から疲れそうだし」

「あ、なら風花ちゃん」

「んー?なに、姉さん」

「今日、私の部屋に泊まらない?」


恐る恐る聞いてみる
だって風花ちゃんは毎日疲れている
だけどやっぱり朝は食べた方が良いと思うし、それに風花ちゃんが休みなんて滅多にないからずっとしたかったお泊まりも実現出来ていなかった

だからしどろもどろになりながらも誘ってみた


「朝は私が起こすし、それに風花ちゃんに部屋にお泊まりしに来て貰いたいなって、」

「…………うん」

「え?」

「私、姉さんの部屋にお泊まりしたい、な」


照れたように言う風花ちゃん
前に雅臣さんや右京さんに聞いた事がある

風花ちゃんは男兄弟ばかりの環境やアイドルってこともあり女の子の親しい友達が今までいなかったのだと

だから最初は私にも警戒していたけど根気強く接していたら次第に懐いてくれて、まるで猫のように擦り寄って来てくれる風花ちゃんが可愛くて愛しくて、初めて出来た妹にきっと此処の兄弟達同様過保護になってしまっている

心を開いてくれた風花ちゃんは他の兄弟達よりも同性という事もあり(自惚れじゃなければ)私を特別扱いしてくれていた


「じゃあいっぱいお話しよう!」

「、うん」

「一緒にお風呂入ろうね」

「……ん」

「それで一緒に寝よ」


こくり、恥ずかしくなってきたのか頷くだけの風花ちゃん


周りにいる人達が羨望と嫉妬の眼差しで私を見つめる

一緒に過ごした月日は断然負けているけれど、私には同性の特権があるんだ

男兄弟の中に二人だけの女の子という特殊な環境
それ故出来る特有の絆


少しだけ、優越感に浸りながらこの後の楽しみに思いを馳せて上機嫌で御馳走様をするのだった





―――――
絵麻ちゃんの風花ちゃんへの想いは危険な香りもしますが純粋な姉妹愛です

風花ちゃんは女友達いません
兄弟目当てに近付く人とか、アイドルっていう肩書きしか見ない人しかいなかったのと
あとはまぁ過保護な兄弟達と風花ちゃん自身の性格のせいだったりします

でも自分で書いといて何ですが私は風花ちゃんみたいな性格の子好きですけどね!


◇◆2011.12.18