突発的な話 | ナノ



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「レディッ」

「あーもうはいはい、分かったから」

「レディ…、……林檎さん」

「レンくん」

「ん、なんだい?」

「龍也にバレても知らないわよ?」

「、だって…」

「ふぅー…」


私の溜め息にレンくんがぴくりと反応する
もう本当にしょうがない子


片手はなでなでと頭を撫でながら、もう片方の手はレンくんのお腹辺りを一定のリズムでぽんぽんと叩く


そう…夜、さぁ寝ようとしていた所を枕片手にレンくんが訪ねて来たのだ
レンくんは怖い夢を見る度に私の部屋を訪ねる
一緒に寝ようって


「ほら、子守唄歌ってあげるから寝なさい」

「林檎さん…」

「ん?」

「俺、鬱陶しいかい?」


不安気に瞳を揺らしながらでも真っ直ぐに見つめてくる、子供みたいな彼

私からしたら全然子供なんだけど、いつも大人びた彼からは想像出来ない姿だろう


「今更ね」

「っ」

「鬱陶しかったら最初っから問答無用で部屋に帰してるわ」

「あ、」

「さぁ、アイドル目指すからには夜更かしはダメよ」

「ふっ、林檎さんもね」


レンくんの年相応の笑みを見てから歌を紡ぐ
優しい柔らかな子守唄


暫くすると段々眠くなってきたのか瞼が重そうだ


「ねぇ、林檎さん」


歌を紡いだままレンくんを見つめるとレンくんは甘く幸せそうな見蕩れる程の笑みを浮かべている


「いつも思うんだ…このままずっと林檎さんを独り占め出来れば、と」
「泣きたくなるくらい温かくて優しい貴女が自分だけを包み込んでくれればって」


うとうとと夢うつつに何とか話している様子のレンくん
頭を撫でていた手とお腹をぽんぽんとしていた手をレンくんの大きな手がそれぞれきゅっと握った


「俺だけを、強く愛してくれれば、って…」

そして私に覆い被さるように抱き着くレンくん

「深く…狂うくらい貴女を……、…」


すー、とレンくんの寝息が聞こえる
同時に私は紡いでいた歌を止めた

良かった
レンくんがあの言葉を紡がなくて
全く、恋愛禁止令があるのを忘れないで欲しいわ

けど私もいけない、か

強く拒否を出来ればいいのに、子供みたいに手を伸ばしてくる彼らを私は振り払えない


温もりを知らない彼らに柔らかい温もりを、優しさを忘れた彼らに優しい慈しみを、甘える事が苦手な彼らに包む甘やか腕がある事を、私はそれらを『先生』として彼らに教えてあげたい


ねぇ、お願いだから早く、早く身近にある幸せに気付いてちょうだい
ハルちゃんというミューズに、目を向けて欲しいの


『私』という存在のせいで彼らの視野が極端に狭くなっている
それじゃダメだから…このままじゃ私が、彼らが伸ばしてくる手を振り払わなければいけない

そんなことしたくないから、お願い


早く、早く、早く
ハルちゃんにフラグを立てなくちゃ


明日からもっと皆がハルちゃんに絡むような事をしよう
そう決意して幼い子供のように温かいレンくんに抱き締められたまま私も眠りに付く




















〜翌朝〜

「おい神宮寺!!」

「ん、龍也さんおはよう」

「おはよう、じゃねーよ!お前なんで林檎と一緒に寝てやがる!」

「ちょっと龍也煩いわよ…起きちゃったじゃない」

「林檎!お前もこいつを甘やかすな!」

「ふふ、ハニー…昨日は熱い夜だったね」

「そうね、ダーリン」


悪ふざけをする私達に龍也が青筋を立てながらふるふると怒りに震えている


「お前ら…っ」


その後私達は龍也の有難いお説教を一時間程頂きました





―――――
私の中のレンは寂しがりやの甘えたさんですてへぺろ☆←
林檎ちゃんとレンはいつもタッグを組んで龍也をからかってます^^
レンはあの中で一番ノリがいいし(精神的にだけど)子供っぽいから林檎ちゃんはレンが結構お気に入りだったり
ギャップ萌えみたいな?←

◇◆2011.11.21