突発的な話 | ナノ



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「風花!大好きなお兄ちゃんが帰って来たよ」

「梓兄おかえりなさい」

「うん、ただいま」

「ちょ、俺スルー!?」

「あ」


可愛い悪戯を思い付きにやりと笑ってしまう
そんな私を見て二人は同じ方向に首を傾げる
……流石双子


「梓兄、お風呂にする?ご飯にする?それとも、わ・た・し?」


首を傾げながら下から覗き込むように普段より瞳を濡らし上目遣いで梓兄を見つめる
照れたように恥じらう笑顔も忘れずに
するとポッ、と梓兄の頬が朱色に染まった


「風花っ」


咎めるような梓兄の呼び掛け
それには悪戯っぽく微笑むことで応える


「…、………」


そういえば椿兄が随分静かだと思いそちらに顔を向けると椿兄は俯いていた

梓兄も不思議に思ったのか顔の火照りはそのままに私と顔を見合せ変だと思っているといきなり椿兄に腕を引かれる


「ちょっと椿!」

「んっ」

「…っ……」


私の唇に椿兄の唇が押し付けられる
まるで私の唇を食するように椿兄の唇で全体を覆われてしまっていた
まるで奪うような口付け


「椿っ!!」


当然この人が黙っている筈もなく無理矢理私達を引き離し、後ろ背で私を庇うように立ってくれる


「いーじゃん梓は、あんな美味しい台詞言われてんだから」

「そう言う問題じゃないでしょ!風花は妹なんだよ」

「別にどうでもいいよそんなこと」

「そんなことって、」

「じゃあ逆に梓に聞くけどさ、梓はないわけ?」

「え」

「風花に欲情したこと」


わー…、それ普通私の前で言うかな
本当椿兄ってデリカシーないなー

なんて暢気に思っていると二人の会話はヒートアップしていっていた



「自分を慰める時に風花を思い浮かべたり風花で(ピーー)する妄想とか全くした事ないって言えるわけー?」

「それは、その」

「ほら、梓だって変わらないじゃん」

「だからって実行するな!」

「だから梓も実行に移したいって思ったことあるでしょ」

「、」

「素直になりなって」

「ねー、それ本人がいないとこで話してもらえないかな」


私が話に割って入ると梓兄は顔を真っ赤にしながら視線を逸らし、椿兄は飄々と笑いながらまた手を伸ばしてきた

けれど先程とは違い今度は優しく引き寄せられ前からぎゅっと椿兄に抱き締められる


「いいじゃん、風花だって俺達の想いに気付いてんだろ」

「さぁ?」

「可愛くねぇー」

「いいよ、要兄は可愛いって言ってくれるし」


私の言葉に眉間に皺を寄せる椿兄と、そっと後ろから抱き着いて来る梓兄

二人に挟まれて痛いくらいキツク抱き締められた


「俺達がいるのに他の男の名前出すなよっ」

「それとも僕達に嫉妬して欲しくてわざと?」

「べっつにー」

「嘘…ほんとはすっげー可愛いよ」

「可愛くないんじゃなかったの?お兄ちゃん?」


嫌味っぽくお兄ちゃん呼びをするけどそれでも椿兄は嬉しかったのかすりすりと頬擦りしてくる


「嘘に決まってんじゃん」

「そうだよ、風花は誰よりも可愛い僕達の妹だ」


私を抱く腕に力を入れる二人
それに身を委ね甘えるよう擦り寄った


妹、か
それ以上にもそれ以下にもならないことを彼らは理解しているのだろうか

まるで私を心底愛しい愛する人を見るような目で見てくる兄弟達
私はそんな重い愛情を向けられても、何とも思わなかった

だって彼らは兄弟だし、私はそれ以上にも以下にも思えないから
彼らは私とどうなりたいんだろう

考えてもやっぱり分からない


「風花」

「んー」

「お前は誰にも渡さないよ」


流石声を売る職業
耳に澄み渡る甘やかな声

なんて場違いな事を考えてしまう辺り私は椿兄の重たい愛の告白とも取れる言葉を何とも思っていないんだろう


「ごめんね、風花」

「なにがー?」

「僕達は君を失いたくない…だからもし風花に大切な人が出来たらきっと僕達は、」


言葉を区切った梓兄
でも何となく区切られた言葉の続きは予想出来た


壊れてしまう、とか、狂ってしまう?
あぁそれともその大切な人を殺してしまう…とか?


、在り来たりでつまらないや


「ねぇ、椿兄と梓兄は私とどうなりたいの?」

「そりゃ勿論手繋いでデート行ったりキスしたり滅茶苦茶に抱いたりーって思ってる」

「椿!」

「梓だってそうだろ?」

「、まぁ…恋人になれたらなって」


この人達バカでしょ


「姉さんなら兎も角、私達は血の繋がった兄妹なんだけど」

「俺は気にしないって!日本で兄妹婚が許されてないなら、風花の為なら兄妹婚が許されてる国に行ったって構わないし」

「そうだね…君と共にあれるなら僕は日本を離れたっていいよ…風花が僕のものになるなら日本に未練なんてない」


きっぱり言い切る二人
でも私にはさっぱり分からない

ただの極度のシスコンかと思いきや、片想いの相手にプロポーズでもするかのように愛を紡ぐ


何処か非現実的過ぎて受け入れられないのかもしれない


やっぱり分からないなー…「分からないって顔してる」


私の考えを指摘してぷにっと頬を突く椿兄


「いいよ、今はそのままで」


よしよしと頭を撫でる梓兄

そして前から右頬に椿兄が、後ろから左頬に梓兄が口付ける


……めんどくさく考えるのは止めよう
今はまだスキンシップが激しいシスコン兄達って考えていればいっか


「「大好きだよ」」



今の関係が壊れてしまうまでは




―――――
読んでて分かると思いますが途中で詰まって挫折した←
後半納得いかないから書き直すかも(;;)


◇◆2011.11.20