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「いたっ」


放課後、薔薇園で傷んだ薔薇を摘もうとしたら棘が指に刺さってしまった


「これくらいなら、平気か」

「平気じゃないだろ」

「え…あぁ、藤先生」


いつの間にいたのか隣に藤先生が座っていた
そっと、傷付いた指を持ち上げて傷口をまじまじと見る


「あー、これは結構深く刺したな」

「そうですか?」

「全然血が止まらないでしょ」


確かに言われてみると、そうかも
私の指を伝う血が何だか危うく見えた

ポケットからハンカチを取り出そうとしたが驚きで動きを止めてしまう

だって、藤先生が私の指を躊躇いなく口に含んだから


「藤先生!」

「ん、ちゅ…」

「ちょ、っと」

「ふ……ちぅ、」

「汚ないですよ!!?」


やっと口を離したかと思うと藤先生は苦笑していた


「なんて言うか、八重原もずれてるな」

「は?」

「普通の女子なら赤面して慌てるんじゃないかい?」

「生憎、普通の女子ではないんでね」

「そうだなー、でも先生はそんな八重原の方が好きだよ」

「それはどうも」


やっぱり先生は苦笑するのだった
でも私は藤先生とのやり取りは嫌いじゃない
前世+今の年齢がきっと近いから、一緒にいると安心出来る

藤先生も私の態度の違いに察しているのか受け入れてくれていた


「ほら、女の子が傷なんて作っちゃダーメ」


きゅっと何処から出したのか絆創膏が巻かれる
そして今度はちゅ、と絆創膏の上から傷口に口付けられた


「全く、」

「いいの。早く治りますようにって俺なりのおまじないだよ」

「お礼を言うべきですか?」

「どっちでもいいよ」

「ならありがとうございます」


笑顔でお礼を言うと藤先生は一瞬驚いた後、何時もよりも甘く優しい笑顔で微笑んだ














八重原の指に伝う血が、何故だか一瞬、アダムとイブに出てくる禁断の果実に重なった

口に含んだそれは当然鉄の味がして甘くもなければ、あまり味わいたいとも思えないものだった

だけど八重原のものというだけで極上のものに変わるから不思議だ


八重原の血が、俺の中に流れ込む
本当に禁断の果実を食べてるみたいで興奮してしまった


八重原は俺の前でだと何だか態度が砕ける
それが凄く嬉しいんだ

違うんだろうけど、君の特別になれたようで

だから指摘なんてしたりしない


なぁ、八重原
今は俺の『好き』を本気にしなくても構わない

けど、頼むから誰かのものになったりしないでくれ


さっき、柔らかい笑顔でお礼を言った八重原を俺は失えない


失えないんだ


だから、何処にも行かないで
俺が捕まえられる所に、手が届く所に…、

嗚呼いっそのこと閉じ込めてしまえればどれだけ幸せか





―――――
今までで一番危うい感じにしたかったのだが…あれ?撃沈したよ?あれれ?

ほら、藤先生って色っぽいから大人の色気を全体的に出したかったのですが
色気って何ぞや?(´゚A゚`)??ってなった←

◇◆2011.09.29
◆◇2011.10.02 移動


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