12-2



放課後、津森が慌てて保健室のドアを開いて入って来た
ゆったり珈琲を飲んでた俺は驚きそちらを見ると、次いで兼田が八重原を、抱えて



「藤先生!ダリアさんがっ」

「津森、落ち着くんだ」



状況から見て八重原が倒れたんだと分かる
そんな状況にも関わらず、兼田が八重原を抱き抱えていることに嫉妬してしまう俺がいる



「兼田、彼女をこっちに」



俺の言葉に眉を顰め一瞬八重原を離し難そうに抱き締め直したのが目に入るが兼田は渋々彼女を俺の腕に渡した



八重原をそっとベッドに横たえる
兼田は部活仲間に連れて行かれ、津森は俺が言い包めて帰した


今この場には俺と八重原の二人だけ


ベッドに横たえる八重原を見下ろす



苦し気に寄せられた整った眉、伏せられた長い睫毛、その下に今は隠されている綺麗な瞳
白い肌はいつも以上に白く、具合の悪さが窺える



「八重原…」

「、ん」



一瞬ぴくりと動くけど意識は戻らなかった



「八重原、」



もう一度呼び掛ける
意味なんてない
ただ八重原が此処にいるんだと実感したいだけ



「、ダリア」



名前を呼ぶだけなのに、こんなに緊張して、心が震えるなんて

自分もまだ若いな、なんて苦笑する


「ダリア」


この世で一番美しく綺麗な名前
そして何よりも美しい彼女



ダリアの唇に自分の唇を寄せ、重ね合わせた



寝ている彼女になんて卑怯なんだと自分でも思う
でも起きている彼女に手を出すのには自分は立場がある
そしてそんな度胸がなかった



「ダリア、大好きだよ」



もう一度キスをする
柔らかく、甘やかな彼女の唇に



誰よりも愛しいダリアに、自分の想いを有りっ丈込めた口付けを、そっと送った



―――――
おいダリア成代の具合はどうなった

いや、贔屓なんてしてません
藤先生好きだけど、うん
贔屓なんて、してないよ


◇◆2011.12.31



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