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些細な、意地悪だった

芹に何時も振り回されているからちょっとした仕返しのつもり、だったんだ





『誤解されたくない人が出来たんだ、今度から余り抱き着いたりしないで欲しい』



私の言葉に芹は驚くことなく、ただ笑みを浮かべる
今まで見たこともない、冷たい微笑
身体が、微かに震えた



「ねぇ、ダリアさん」

「…、……」

「貴女は優しい人だ…僕達が貴女に縋れば優しいダリアさんは僕達を振り切れない」

「芹、」

「それでもダリアさんが僕達以外の人間を優先すると言うのなら」


す、と芹の腕が伸ばされる
すると急にグンッと身体を引かれ床に叩き付けられた


グッと、芹の今の瞳と同じように冷たい手が私の首に掛けられる



「……っ…」

「貴女を世間的に殺しましょう」

「あ、……くっ」



どんどん力を込められて息が、出来なくなり苦しい


「世間的に貴女を殺して、何処かに閉じ込めて鎖で繋いで監視して、僕だけのものにします……あぁ勿論誰にも教えたりなんてしません」

「せ、りっ」



首に掛けられた手に自分の手を重ねると一瞬ピクリ、芹が反応した


すると首を圧迫していたものが急になくなり私の肺は酸素を求めて噎せてしまう



「ごほっ、はぁ、はっ」

「ダリアさん、」



芹を見るとポロポロ、顔を歪めることなく私を見据えたまま無表情に涙を流していた

その姿が痛々しくてズキンと私の胸にじわじわと罪悪感が広がる

涙に気付いていないのか、拭おうなんてせず私に腕を伸ばしてくるとぎゅっと抱き着いてきた



「嫌です、ダリアさん」

「、芹」

「僕には、貴女が必要なんです」



ぎゅうっと抱き着いてくる芹を見ると、まだ子供なんだと実感する

そうだ
幾ら飛び級してたって彼はまだ中学生の年齢なんだ

そんな子に仕返しなんて、私はなんて大人気ない


私に縋るようにぎゅっと抱き着く芹を強く抱き締め返す


私が先程のは冗談だと伝えると、怒るかと思いきや嬉しそうに微笑んだだけだった



















ダリアさんはやはり鈍い
そして僕に甘い


―――芹はダリアに抱き締められたまま気付かれぬように、口元を歪めた。


これでダリアさんの心に僕にはダリアさんが必要だと、首を締めることで恐怖と共に植え付けれた

彼女自身は思わないだろうけど、彼女の中にある潜在意識が僕を見捨てる事に対して恐怖を覚えている筈

人間は無意識に恐怖を避けようとするもの

だからその潜在意識は彼女の心を束縛する鎖になる


あぁ、笑みが溢れてしまう


それでいいんです

もっと、もっとダリアさんを縛りつける見えない鎖を用意しなければ


いつか彼女は僕達から離れて行ってしまうかもしれない


だから本当はダリアさんを鎖にでも繋いで閉じ込めて置かないと不安だけど


でもやっぱりダリアさんの意思で傍にいてもらいたいから


ダメですね、ダリアさんのことになると本当


彼女に抱き締められたまま、僕はそっと目を閉じた





―――――
土下座

いやー、ね
全部計算だったんだよーって言いたかった
なんか、最初から嘘だって気付いてそうな芹くんですね

本当にごめんなさい


◇◆2011.10.11


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