9.5




「蘇芳先生、」

「なんだ」

「これくらいの買い物、学園で済んだのではないですか?」

「…………」


確かにこれくらいならば学園で事済んだだろう
だが今回、私に課せられたのは彼女を連れ出すということ


彼女を陥れようとした愚かな女達への制裁を彼女に気付かれないように


そんな事、彼女が知ったら心痛めるだろう
私達とは違い彼女は優しい人間だから


いいんだ


彼女が心痛めるのも、心安らぐのも、その心が動くのは私達のことだけでいいんだ、いい、のに


他のことに心を傾ける必要なんてない
独占欲が強い私達は君に心を傾けられるものを、どうしたって許せないんだから



「蘇芳先生?」

「ん?」

「買い出しを手伝ったご褒美にクレープを奢ってくれませんか?」



彼女が指差すのは近くのクレープ屋
はにかむ彼女の笑顔が愛らしくて、私も僅かに頬が緩みそうになってしまった














私は蘇芳先生の手を引っ張りクレープ屋の前まで行く

最近美味しいと有名なお店だから行きたいと常々思っていたんだが中々時間が取れなかった


だから嬉しい


「先生は買わないんですか?」

「あぁ、私は遠慮しておく」


先生に奢って貰ったクレープを片手に尋ねる
彼は断るも何故か私を見つめたまま思案顔をした


ニヤリ、嫌な笑顔をまた浮かべる
きっと録な事は考えていないだろう


「やはり食べてみたいな」

「買って来たら如何ですか?」

「君のを一口、くれないか」


きょとんとしてしまった
もっと酷いことを言われると思ったから


す、っと蘇芳先生の口元にクレープを持っていく


「先生、あーんして下さい」

「、」


私の言葉に蘇芳先生は目を見開き固まってしまう
私は首を傾げもう一度先生に尋ねた


「あーん?」

「…っ……」


がぶり、蘇芳先生らしからぬくらい豪快にクレープに噛み付かれた

先生の顔を覗き込むと微かに赤い頬
それにやはり首を傾げてしまう


「…………甘い」

「クレープですから当たり前です」

「ふんっ」


そっぽを向く彼
それが何だか可愛く見えてクスクス、笑ってしまうと先生はムスッとしてしまった


「すみません、」

「笑いながら謝られても誠意が伝わらないな」


先程の表情から一変
またニヤリと彼はドSな笑みを浮かべる


「これはお仕置きが必要かな」


あぁ、しまった…なんて今更思っても仕方ない、がやはり彼のお仕置きは怖い

私は受けたことないが、人伝いに聞いた蘇芳先生のお仕置きは、怖いらしい


仲良くなったからと言って調子に乗りすぎたか


なんて悶々考えている隙に蘇芳先生の手が私に伸ばされる


今の私は『八重原ダリア』だから、怖がる素振りは見せなくても心臓はドクドクと、煩かった



―――ちゅ、



気付いたら前髪を払われ、露になった額に口付けられていた


「え、」


それを理解するとじわり、じわり頬に熱が集まる
これが葵達なら微笑ましく笑って流せただろう
年齢的には有り得ないが私にとって彼らは弟みたいな、息子みたいな存在だから

だけど、どうだろう

大人に、それもかなりカッコいい部類の人にこんなことされれば、幾ら私でも照れてしまう


「やっと照れたな」


満足そうに笑って蘇芳先生の顔は離れていった

ぎゅっと手を握られ歩き出す

まだ頬の熱が冷めてないのに、手を繋ぐなんて


「、」


私は照れるのを隠すように無言でクレープを食べ進める


「(間接キスには気付いていない、か)」


また微かに色付く蘇芳先生の頬に気付かぬまま私達は会話もそこそこに、でも手は離れることなく学園まで帰るのだった





―――――
無自覚なダリア成代に振り回される蘇芳
なんて俺得\(^o^)/

でもドSな蘇芳はやり返すだろうと
けど結局はダリア成代の知らない所でダリア成代が勝っているという、ね!

てか蘇芳先生が偽者過ぎて全力で土下座します本当にすみません!!!


◇◆2011.10.04


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