ラストコールを聴くまでに




今私は、イッキさんとショッピングに来ていた




「ねえ、ミネ」

「…………なんですか?」

「こっちとこっち、どっちがいいかな」


間が空いてたことは一切気にせず彼は訪ねてきた

イッキさんの手にはふんわりとした可愛い白のワンピースと黒のミニスカのワンピースが握られている

そう、イッキさんと買い物に来ると彼は絶対に私の服や身に付けるものを買おうとする


「うーん、ミネにはどっちも似合いそうだね…よし、両方買おっか」

「い、いいですよ!それに買うなら自分で買います」


しかも私のものなのに絶対にお金を払わせてはくれない


「いいの。それに僕がミネに払わすわけないでしょ」

「…でも」

「こういう時くらい甘えてよ…じゃなきゃ君、僕に全然甘えてくれないからさ」

「…、………」


私が困った顔をしてしまったからか、イッキさんは苦く笑って私の髪をそっと撫でてくれた


「ねえ、前から聞きたかったんだけどさ」

「、?」

「どうして……、…どうして僕と距離を取ろうとするの?」

「え」

「最初はミネも思春期だからって思ったけど、そういうわけじゃないんでしょ」


イッキさんの言葉に俯く
そうだ、思春期だからなんかじゃ、ない

故意に避けてる

分からないんだ
私という異物がいるだけで物語りが変わってしまっている
平行世界の一つだとしても自分がどう皆と接すればいいか分からない


「…ごめん」

「、イッキさん?」

「ごめん、言いたくないなら聞かない。だから泣きそうな顔をしないで」


―――ごめんなさい。


そう言うのが精一杯だったんだけどイッキさんの悲しみを帯びた表情に、もう一回謝罪を重ねてしまう








結局イッキさんは悩んでいた二つのワンピースを購入して私に渡してくれる

頑張って笑顔でお礼を言うとイッキさんも満足そうに微笑んでくれた



ねえ、いいのかな
私みたいな異物が、貴方たちに甘えても



そっと、彼の手に私の手を重ねてみる


するとイッキさんは驚いたように私の顔を見た

けど、けど直ぐに本当に嬉しそうな顔をするんだ

そんなイッキさんを見てたら泣きそうになる


ごめんなさい

ごめんなさい、勝手に悩んで、傷付けて

いいんだよね
だって、もう私はここにいるんだから
ここにいるのは、ミネなんだから


「ありがとう、イッキお兄ちゃん」

「っ、ミネ…」

「私、アイス食べたいです」

「…勿論、いくらでも奢ってあげるよ」



そして私達は久しぶりに手を繋ぎながら歩くのだった



「あ、イッキさんの美味しそう!一口下さい」

「もうお兄ちゃんって呼んでくれないの?」

「……流石に恥ずかしいですので」

「なんだ、残念。まあいっか…ほら、あーん」

「あー、ん…美味しい」





(「その笑顔が見れるだけで良かったのに、僕は欲張りになってる…それだけじゃ足りないんだ、全然足らない。もっと甘えて欲しい、頼って欲しい、僕だけを見て欲しい」)


(「君にもこの目の力が効いて僕しか見れなくなればいいのに、なんてそんな事ある筈ないのに」)





―――――
ううむ…
絶対一回はこんな風に悩むと思うんだ
実際はこんなあっさり自分の中で解決出来たりしないような気もするなー

まあ、そこは管理人のクオリティーってことで!

◇◆2011.09.28



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