馬鹿みたいに愛は尊い

 
夏の信濃旅行
夜、皆が寝静まった頃、俺は眠れないでいた。寝ようとウトウトと浅い眠りに着いていたら見た夢。思い出したくなかった、現実


父親が人を死なせてしまって、周りの目が、態度が酷かったあの頃。小さい俺が、情けなく泣いている夢。トーマもマイもいたけど、それでも俺の心は傷付いたまま


「ミネ、」



あぁ、会いたい


















コンコンコン、控えめに叩く扉。この扉の向こうにいる彼女はやはりもう寝ているのか。しかもこんな夜中、非常識過ぎる


「………戻るか」

「んぅ、だれ……」


踵を返した瞬間、後ろから扉が開く音と眠たげな甘い声。振り返るとトロンとした目を擦りながら、此方を見るミネがいて、胸に、熱い何かが込み上げる


「、シン?どうしたの?」

「あ、いや、悪い……」


ただその可愛い容姿を柔らかい声音を、あったかいコイツの温もりを感じたかっただけで


「悪い、何でもない。起こしてごめんな………おやすみ」


ミネの姿を一目見れたから、きっともう寝れる。今度こそ踵を返そうとしたら、後ろから弱い力で腕を引かれた


「、」

「シン?」

「………、…」

「……もう」


呆れたような声が聞こえた後、強い力で引っ張られ彼女は何を考えているのか、俺を部屋の中へと招き入れる


「おい、ミネ!お前なに考えて…ッ……」


ベッドに寝かされる身体。目を見開いてミネを見ると真っ直ぐに俺を見ていて、俺は何が何だか分からなくなる。なんなんだよ、この急展開………そんなことを考えてる間にミネが動く。俺の横に寝転がり、その華奢な腕で俺の頭を抱き締め、その柔らかな胸の中に抱き込められた


「ちょ、まじで待てって!」

「シンうるさい。黙って寝なさい」

「だから……っ」

「こうして、人の温もりと心音聞いてると、不思議と落ち着くでしょ」

「……………」

「だいじょーぶ。だいじょうぶだよ、シン」


目を閉じてミネの温もりを感じる、ミネの心音を聞く。あぁ本当だ。満たされていく、先程まで胸に燻っていた黒い靄が消えて、安心が広がっていく


「シン、あったかいね」

「…………そうだな」


本当に、あったかい
ぎゅうっと、細くて頼りない華奢な背に腕を回す


「おやすみなさい、シン」

「おやすみ、ミネ」


もう眠れないだろうと思っていた夜は、彼女の腕の中、彼女の温もりに包まれて、直ぐに夢の中へと誘われた



―――――
半分寝惚けてるミネちゃん。朝起きて腕の中にいるシンに驚き、やってしまったと落ち込みます((笑

◇◆2013.03.27


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