拘束されたハッピーエンド

幾重にも重ねられた鈍く光る銀の鎖。狭い檻の中で自由をなくした私は何を見るでもなくぼんやりと檻の屋根を見つめる

何故自分がこうなってしまったのか、何故、何故彼女じゃなく、私が


「ただいま」


あぁ帰ってきた。狂気に捕らわれ私を捕らえた悪魔のような彼が


「ただいま、ミネ」

「、」


ぷいっとそっぽを向く。そんな私にトーマ先輩は苦笑いを溢し檻の外から伸ばした手で私の頭を撫でてきた


「今日はご機嫌ななめだな」

「………………」

「ミネ?もしかして具合悪いのか?」


トーマ先輩は慌てたように檻を開け檻の中に入ってくる。本当はトーマ先輩を突き飛ばして逃げてしまいたい、けど鎖と繋がっている私はそんなこと出来なくて、もうそんな力もない


「ミネ?熱は、ないな。どっか痛い?ツラいなら無理するなよ。全部俺がどうにかしてやるからな」

「じゃあ、ここから出して下さい」


場違いな程、冷静な声が出ていた。温度もないその声にトーマ先輩は困ったように目尻を下げた


「それは出来ない。ミネには帰る場所がないだろ?それにミネの居場所はもう此処だ」

「違います!」


違う!私には帰る場所がある。お父さんもお母さんも、冥土の羊だって、いつだって私の居場所だ


「私の居場所を、トーマ先輩が決めないで…!」

「………っ…」

「私を帰し」


ガシャンッッ………辺りに響いた大きな音に言葉は続かず、咄嗟に目を瞑り肩を竦めてしまう

そして沈黙が続き私は恐る恐る目を開けて、トーマ先輩を見上げた。すると暗い色を宿した淀んだ黄色が私を真っ直ぐに、でも優しく見つめていた。とても柔らかく酷く歪んでいる瞳
そのアンバランスさが怖くて、恐ろしくて。心臓がドクドクと警鐘のように鳴り響く


「なに、いってるの?」

「、ぇ」


急なトーマ先輩の囁きに私は掠れた声で返す


「ミネは、ミネの居場所は、この中で、俺のこの腕の中で、ミネ…、……また俺を捨てるの?」

「…、…す、てる……?」

「いつもウキョウさんに優しくしてケントさんに頼ってシンと楽しそうに笑ってマイに触れさせてイッキさんには甘えて、なんで俺には、俺のことを見てくれないのに他の男ばかり、他の奴ばかり見て俺を、俺を見ないんだ!!!!!!!!!」

「、ぁ」

「こんなに好きなのに!!!!!!!!好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで、こんなにミネを愛してるのに」


激情した声からどんどん柔らかくなる声は慈愛が溢れている


「なんでわかってくれないの?」


なんでって、そんなの分かるわけないよ………檻の中に閉じ込められて幾重にも鎖に繋がれて、こんな一方的に愛を押し付けられる。なんで、なんでマイ先輩は耐えられたの?こんな閉鎖的な檻の中、重たい鎖をどうして


「でもこれから時間はいくらでもあるんだ。これから沢山ミネにちゃんとわかってもらえるように俺がんばるから」

「、ふ」

「泣かないで。大丈夫だよ。大丈夫だから」

「…、……や ぁ」

「大丈夫。沢山愛してるから」

だれかたすけて



それは頑丈に重ねられた鎖と硬く閉ざされた檻に拘束されたハッピーエンドだった


―――――
ミネ成り代わりは9ヶ月ぶりの更新になります、ね……もう本当に申し訳ございません
AMNESIAは今でも大好きです、大好きですが、ネタが……それにこんな久しぶりの更新になるのにこんな駄文で、更新をお待ち下さっていた皆様。本当に申し訳ありませんでした

◇◆2012.12.31


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