君を守るのは僕達の特権



「もーう!なんでクリスマスにバイトなの!」

「ミネ落ち着いて」


バイトが始まる前
裏でブーブー文句を言う私を宥めるマイ先輩
あわあわしてるマイ先輩は可愛いけど、でも何が悲しくてクリスマスにバイトだなんて


「そういえば…」

「ん?」

「マイ先輩はクリスマス誰かに誘われなかったんですか?」

「うん(それにミネと過ごしたかったし)」

「えぇー!(ちょっと何で誰も誘ってないのよ!)」


ていうか皆今日はバイト入ってるし


「(あれ?もしかして皆で誰が誘うか争って結局決まらなくて最終的に平等に過ごせるように皆バイトに入れたって、ことなのかな?)」

「ミネ?」

「ああなんでもないです!」

「そう?」

「はい!」


にこっと笑うとマイ先輩も可愛らしく笑い返してくれる
今日は皆のマイ先輩争奪戦が見れるのかな〜、と内心ワクワクしている私の期待は早々に裏切られるのだった


「ミネちゃ〜ん!こっちの注文来て来て〜」

「ミネちゃん、こっちも〜」

「おれ今日バイト終わった後のミネちゃんの時間が欲しいな〜」


なんなのー!今日に限ってお客さんが多いしナンパもしつこいし…、


「申し訳ございません、ご主人様。今日は夜までバイトですので」

「その後でいいから」

「一緒に聖夜を過ごそうよ」


ニヤニヤと下劣な笑みを浮かべるしつこい男二人
常連さんとかならこれで引き下がってくれるのに


私が何と言って断ろうか悩んでいると一人の男が厭らしい手付きで腰元を撫でてくる


「いやっ!!止めて下さい!」


思い切り振り切ったのがいけなかったのかテーブルの上に置いてあった珈琲が男の一人に掛かってしまった


「あ、」

「あーあ、溢しちゃったね」

「どう責任取ってくれるわけ〜?」

「っ、クリーニング代は私が支払います」

「それより慰謝料としてこの後付き合ってよ」

「ねぇ…ミネちゃん」


また腰元に回る腕
ねっとりと絡み気持ち悪いけど振り払えない悔しさに涙を流しそうになった



その時、パシャッと音が聞こえたかと思ったら腰元に絡み付いていた腕が離れていた



「お客様、申し訳ありませんが従業員へのセクハラは止めて下さい」

「ていうかミネに触るなんて不愉快なんだけど」


目の前には男の手を捻り上げているトーマ先輩とキッチンにいる筈のシンが空のグラスを持ち(中身は男に掛けたと思われる)(男の一人がびしょ濡れだし)、私を庇うように立っている


「ミネ、大丈夫?」

「君はこちらに」


いきなり肩を抱かれ震えそうになったけど次いで聞こえる甘い声と私を気遣う声音に安心して身体の力を抜いてしまった


「ミネ?」

「大丈夫か?」


私の肩を抱いていたイッキさんに身体を預け、ケントさんが心配そうに私の頬に触れる


さっきの男達に感じた気持ち悪さはなく安心を与えてくれる温もりに我慢が出来ず涙を流してしまった


「っ」


今、息を飲んだのは誰だったか



怒りに拳を震わせたのは、憎しみに瞳を滲ませたのは、悔しさに唇を噛み締めたのは、不甲斐なさに眉間を寄せたのは、一体誰だったか















「ミネ、大丈夫?」


心配そうに眉を下げながら私の顔を覗き込むマイ先輩
私はコクン、と頷くのが精一杯だった


「さっきの奴等は追い払って来たから」

「大丈夫だよ、ミネ。お前の仇は俺が取っといたから」


シンの言葉に安堵していたら投下されたトーマ先輩の台詞
何をしたのか気になったが怖くて聞けなかった


「ほら、気を取り直そう」


イッキさんはパンパンと手を叩きケントさんに目配せする


「あぁ、これを」


ケントさんが持って来たのは大きめの可愛らしくデコレーションされたケーキ


「今日はクリスマスなのに皆頑張ってくれたからと店長が店の材料を分けてくれたんだ」

「ケントさん、仕事の合間になんか作ってるとは思ってたけどこれを作ってたんですね」

「まあな」

「シャンパンも貰ったんだ。ノンアルコールだからミネ達も飲めるよ。だから、ね…嫌な事は忘れて楽しもう」


イッキさんの言葉に皆が動き始める

ケントさんがケーキを切り分け、トーマ先輩がグラスを持って来てそれにイッキさんがシャンパンを注ぐ
シンがそれを皆に配り、あっという間にミニパーティーの準備の出来上がり


「ミネは上に乗ってるチョコレートが好きだったよな」


シンが持って来てくれたのはチョコレートが乗ったケーキ


「え、私が貰っちゃっていいの?」

「だから持って来たんだろ」

「……ありがとう」


自然と緩んでしまう頬


「やっと笑った」


誰が言ったか分からなかったが、皆の優しさに何だか泣きそうになった


「じゃあ皆、クリスマスなのにお疲れ様。乾杯」

「「「かんぱーい!」」」


悲しいことがあっても、皆の優しさで救われて沢山笑える


サンタさん、お願いします

可愛い洋服も綺麗なアクセサリーもいらないから

この幸せな時間がもう少しだけ続くように、一緒に願ってくれませんか



―――――
久しぶりの更新
しかもクリスマスとか過ぎてるし(;;)

皆はマイちゃんじゃなくてミネ成代と過ごす為にバイトに入れました
あ、勿論マイちゃんも←

やっぱり一話完結のが書きやすいのでこれからもこのスタイルでいきます!
続き物とかまじ無理です…。


◇◆2011.12.30



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