突発的な夢 | ナノ



ただ君が好きなだけ



彼女は私にとって鬱陶しい存在だった


「トキヤくん、今日もカッコいいね!大好き!」

「そうですか、それはありがとうございます」

「もう、トキヤくんは照れ屋なんだから」

「どこをどう取ったらそうなるのですか…はぁ」


いつも私に『好き』と言い付きまとってくるパートナー
音楽の才能は認めていたが当時の私には彼女の存在が邪魔で仕方なかった


理由は私が七海さんに惹かれていたから
彼女の音楽への真っ直ぐな想い、ひた向きに努力する姿勢、七海さんが作り出す音楽が好きだった


だが学園長に決められたパートナーは違う人で、確かに彼女の作る音楽との相性は良かった
だけど七海さんの音楽を私は歌いたかったんだ


だから冷たい態度を取った

でも私がどんなに冷たくしても彼女は何時もへらへら笑っているから、彼女は泣かなくて傷付かない人なんだと勝手に思い込んだ



そんな人間、いるわけないのに



暫く月日は流れ、彼女は最低限私に近寄らなくなっていた

私には好都合だった



だった、はずなのに



彼女が別の男と仲良くしてるのを見ると胸がざわつき、締め付けられる



薄々気付いてはいたんだ
私が過去を振り返ればいつでも優しい彼女の笑顔がそこにあった

めげずに私に笑いかけてくれて、HAYATOと一ノ瀬トキヤの間で苦しんでた時何も聞かずに傍にいて慰めてくれて、私の音楽を必死に考え作ってくれる彼女に


惹かれていた


確かに七海さんの『音楽』が好きだった
けど、七海さん自身を好きだったかと聞かれると答えは否



そうだ、私は『彼女自身』を好きなんだ



やっと気付けた

彼女と沢山話し合おう
今度『好き』と言われたら『私も』と返してみようか
それか抱き締めてみたらどうなる



そんな想像を膨らませる私は、忘れていた
彼女に避けられていたことを



彼女と喋らない日々は続きもどかしくなる

あぁ、そうだった
何時も彼女から声を掛けてくれていたんだった
なら避けられている今、此方からアクションを起こさなければいけない



そう決意した時、学園長から言われたパートナー解消



勿論許容出来る筈もなく抗議する
けど学園長の決定は絶対



納得のいかない私は彼女を探した
彼女はどう思ってるのか
許容したのか、していないのか
焦燥感が私の中に駆け巡る



やっと見付けた彼女は教室にいた


彼女を見付けた私は驚愕で目を見開く



何時も笑っていた彼女がぽろぽろと綺麗な瞳から白い頬へ、何粒も何筋も雫を溢していたから



「、一ノ瀬、くん」

「っ??!!」

「パートナー解消のこと、聞いた?」



そうか、彼女は私とパートナーを解消されるのが悲しくて泣いているのか
じわりじわり、喜びが広がる胸


『大丈夫。
私達が力を合わせて学園長を説得しましょう』



その言葉を音にする前に彼女のか細い声に掻き消されてしまった



「ごめんね、私が学園長にお願いしたんだ」

「、え」



鈍器で頭を殴られたような気がした
彼女が、学園長に…?

意味が分からなかった、いや分かりたくなかった


その時の私は何故ばかり考えていたけど、今思えば当たり前だ



今まで私は彼女の優しさを踏み躙ってきたのだから



でも自覚した想いは止めることも出来なかった




















































「では誓いの口付けを」


神父の言葉にハッとなる
どうやら随分昔まで過去に想いを馳せていたみたいだ


ちらり、前を向くと綺麗な純白に包まれた愛しい彼女


本当に綺麗だ


あの頃から私の想いは消えることなく彼女にある
ずっと好きで愛しくて、諦めるなんて出来なかった
したくもなかった



柔らかく微笑む彼女に高鳴る胸



愛しくて愛らしい私の愛する人



どうか、お願いです



「幸せになろうね」

「もちろん」







































「大好きだよ、音也」





他の人のものにならないで






遅すぎた想いに鼻の奥がツンとする

あの時、彼女の『好き』にもっと真摯に向き合っていたら
七海さんを好きだと勘違いしていなかったら、無理矢理にでもパートナー解消を阻止していたら、泣いている彼女を抱き締めていたら、好きだ、と告げていたら



お願いです、神様
お願いです、もう一度だけ私にチャンスを下さい
お願いです、彼女を私が、他の誰でもない私が幸せにしてあげたいんです
お願いです、お願いです

































は、と目が覚めた一ノ瀬トキヤは辺りを見回す

懐かしい部屋が其処にあった


急いで年号を確認すると、有り得ない



過去に戻っていた



もしかして夢でも見ていたのかと思ったが、それにしてはやけにリアルだった



『願いが届いた』



トキヤはそう思うことにする



それなら何時に戻って来たのかトキヤは気になった

まだ自分が七海さんを好きだと思っていた時期か
それとも彼女に避けられている時?パートナー解消はどうなっている?もしかして音也と付き合い出した時期か



震える手で日付を確認して、記憶を辿る



自分の記憶が正しければ今は、自分と彼女がパートナーを解消して、音也と彼女が『特別』親しくなり始めた時だ



特別と言っても付き合っているわけじゃない
元々仲良かった二人が今まで以上に急接近し始めた時期と言った方が分かりやすい



そんな状態からの再スタート
だけど希望はある

何より私は『未来を知っている』

でももしこれで音也と彼女が付き合って結婚という結果になったら、私はもう何も出来ない、何をしても無駄という事



最初で最後のチャンス
生かすも殺すも、自分次第



すみません、音也
ライバルであり大切な友人ですが、彼女だけは譲ることは出来ません





―――――
補足1:トキヤの願いが強すぎて神様が一瞬呑まれてしまい時空を歪めたっていうご都合展開です。すみません;;

補足2:確かにトキヤは未来を知っているけど、役には立たない
ある意味パラレルの世界だからトキヤが未来を『知ってしまった』ことで歪みが生じ、皆がトキヤの知っている過去と同じ行動を取るとは限らない

補足3:だけど音也(→)(←)ヒロイン←←←トキヤは変わらないし基本的な事は変わらない
多少言動が異なるくらいなだけ

補足4:ヒロインはトキヤが春歌を好きなのに気付いていた
少しでも自分を見てもらいたかったけど叶わなくて頑張れなくなって、二人の幸せを願えない自分が嫌で、学園長にパートナー解消を求めてしまう
典型的なすれ違い


トキヤを泣かせたいが為に思い付いたネタ
うわー面白そうだけど、この後の展開考えてない



○やっぱり音也とくっついて最後トキヤを泣かせる

●トキヤとくっつけて普通にハッピーエンド

○トキヤvs音也のほのぼの

●大穴でダムさまがヘリで迎えに来てくれるとか!ダメですよね分かってます


なんか最後悪ふざけが癖になりつつあるェ…(´・ω・`)
なんか、もうすみません;;


◇◆2011.10.18

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