合宿所の部屋からは星がとても綺麗に見える。明るく輝く見事な一等星もあるけど、俺が見たいのは小さくて淡い光を放つあの星なんだ。


数ヶ月前、俺の彼女が入院した。「すぐ退院する」と言われたけどやっぱり心配だったから、一日中付きっきりで過ごした。そんなある日の夜、
「ねえ、見て!あの赤く光ってる星、ヒロトみたい!」
「あの星?明るすぎて俺には勿体ないよ」
「勿体なくなんかないよ!私、このベッドからあの星を見る度に、ヒロトの事を思い出せるから幸せなの」
あの時ふわりと笑った笑顔が素敵だった。つられて俺も笑顔になったのを覚えている。
そしてもう一言、彼女はこう言った。
「私…あの赤い星の隣にある、小さな星になりたいな」



その二週間後に彼女は亡くなった。始めて聞かされた彼女の病名に、ショックで放心してしまったためか、あの時のことはよく覚えていない。彼女が「星になりたい」と言ったのは自分の死を分かっての事だったのかと思うと、何もしてやれなかった自分に嫌気がさした。




それからというもの、彼女が言った「星になりたい」という言葉が俺の頭から消えない。きっと彼女は本当に星になったのだと思う。
だから彼女の形見の望遠鏡で、いつでも星になった彼女を見つめていられるようにしたのだ。




(だから俺の部屋には望遠鏡があるんだ、)






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