「ねえ、ヒロトさん。明日も会社でしょ?だめだよ、ちゃんとベッドで寝なくちゃ」
「いやだ」
「そんなワガママ言うんだったら、私、今夜はお家に帰っちゃうよ」
「それもいやだ」
私の腰に絡みつけた腕をさらにきつくして、ヒロトさんは頭を押し付けた。帰ったなりスーツのままで、ソファに座ってくつろいでいた私に抱きついて、それから、そのまま。
「だって、ヒロトさんがここで寝ちゃったら、私、動けないんだもん。今朝だって体痛くなっちゃったんだよ」
「そんなのいいじゃないか。夢子が最近学校を休んでいるのは知ってるよ」
「」
まさかバレていたなんて。さすがヒロトさんってとこだ。そうやって不意をついてくるところに、やっぱり年上なんだと感じてみたり。
「どうしたの?学校で何かあったのかい」
でも、年上の社会人のくせにずうっと中学生の私に抱きついちゃったりして、変なのって思うけど。
「別にいいもん」
そんなこと別によくて、ヒロトさんがヒロトさんならそれでいい。
「いつか話してね、」
「う…ん……」
曖昧な返事をしてソファに深く体を埋めた。目をつぶった。そうでもしないと泣きそうだった。
「はい、」
腰のあたりが軽くなったので目を開けると、ヒロトさんが腕をひろげていた。ヒロトさんも泣きそうだった。やめてよ、もう。私がヒロトさんのことを抱きしめたいのに。勘違いしないでよ、ヒロトさんに抱きしめられたいわけじゃないもん。
「力が抜けただけなんだからね…」
くたん。ヒロトさんに寄りかかった。あたたかい。



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