クーラーがあまり効いていない生温い室内で、飲みかけのサイダーが入ったコップの表面の水滴が流れ落ちた。
私はベッドに腰掛け、基山はミニソファに身体を沈めている。

「夢子ちゃん、間接キスしてもいいかな」

「間接?」

「うん。そうだよ」

基山は私が口をつけたコップを使いたいということか。

「……まあ、別にいいけど、改めて言われると気持ち悪い」

「突然される方が驚くと思わない?」

「それもそうね。…じゃあ、どうぞ」

「いただきます」


「ひぁっ…!な、にすんのよ!!」

「カンセツキスだけど」

「いや違うでしょ!やめてってば!」

「君の関節に、キス」

「はあ…?」

「関節キス!なんてね」


目を細めて私のふくらはぎを掴み、膝の関節に舌を這わせる基山。止めさせるために頭を押し退けようとすると、今度はその手を取られて指の関節を舐められる。なるほどすごく理解した。


「基山、暑すぎておかしくなったの?」

「別に」

「なら、そろそろやめてよ…。夏だし、汗かいてるからそんなにきれいじゃないし」

「夢子ちゃんに汚いところなんて無いよ。身体の隅から隅まで、ね?」

すぐさま基山の右頬を叩いた。


「もう、乱暴だなぁ…。俺は部活が忙しいから、今日は貴重な貴重な貴重な貴重なふたりだけで過ごせる時間なのに。…ね、いいでしょ?関節キス」

「………………」

「無言は肯定、と見なすよ」

「……………」

「うん、では再び…いただきます」

ベッドのスプリングがギシリときしんだ。

キスとか言っておきながら舐めてるし、関節とか言っておきなから別の場所にも手を出しているし。こんなのが彼氏でいいのかと思いながらも私は許しちゃってるし。


あー!もう、夏が暑いからいけないのね!




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