気付けば私はベッドで横たわっていた。隣にいたはずの誰かの存在を探したのだけれど、それが誰なのかは思い出せない…。
枕が涙で濡れている。
私は長い夢を見ていたのかもしれない。

学校へ登校するといじめはなくなっていたけれど、どことなくクラスメイトは私を避けているようだった。


そして数年が経った今は、少し遠くの高校に入学し平穏な日々を過ごしている。

きれいな青空だ。
教室から見えるこの風景が見たかったから、窓際の席というものに昔から憧れていたのだ。

不意に、昔の記憶が頭を過ぎった。
中学生のときに不思議な体験をした気がする。けれど、たった数年前のことなのに何も思い出せない。私が頭の中で想像していた夢物語だったのかもしれないな。なんて考えに耽っていたその時、


「夢子、」
耳元で誰かが囁いた。
その声はクラスメイトのものではないけれど、確かに知っている。
「え、……」
沢山の思い出が詰まった箱を開けてしまったかのように私の記憶が溢れ出て止まらない。
すぐに振り返った。
「シュウ!!!」泣きながらシュウに抱き着いた私にクラスメイトがざわつく。
「ここに転校してきたんだよ」
「こ、これまで…どこに行っていたのよ!!」
「ちょっとカミサマと交渉してきた。長くなるだろうと思って、君が寂しくなってしまったらいけないから夢子の記憶も持って行っちゃった」
「わ、たし……もう、あのことは夢だったのかと、思っちゃったじゃない…!!」
「ごめんね、でも今度こそ僕は本当に生きているから」
ぎゅっと強く抱きしめられた身体が熱くなってふらふらして。
「ばか。シュウは最初から、この世界に生きてるんだから」
負けないくらい私も抱きしめ返した。
「ふふ、そうだったね」
あの時みたいにキスをして、それはやっぱり涙の味だった。













――――――

茜ちゃんは雷門中生徒でなく、他校生のいじめっ子として登場させました




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