ハッとして目を開けると自分のベッドの中だった。
起き上がると額から冷たいタオルが落ちて布団を湿らせた。
「目が覚めた?熱は……下がったみたいだね」
「シュウ!」
枕元でシュウはにっこりと笑っていた。
そんな彼を見て今まであったことを思い出す。彼に酷いことを言ってしまったことも。
「ごっ…ごめんなさい!!………私、シュウを傷付けるようなこと、言っちゃった。怪我を手当てしてくれたのも、助けてくれたのも、全部シュウだったのに……。本当はもっと違うことを言いたかったの!」
冷たいタオルを握りしめ、早くなる心臓の音を抑えようと深く呼吸をした。


「……、ありがとう。シュウがいなかったら、やっていけなかった」
「夢子……」
シュウは驚いたように目を大きくしていたが、やがてゆっくりと口を開いた。
「僕の方こそ、ありがとう」
「えっ!?私、迷惑ばっかりかけて、全然何も…」
「違うよ。――僕は久しぶりに誰かと話せて本当に嬉しかったんだ」
大きな瞳がぱちりと瞬きをして私を見つめた。どきどき、と心臓の音が早くなる。
「あと、」
シュウは私の頬に手を添えた。温かい人間の感触が触れる。そんなはずはない。驚いて頬に手を当てると、彼の手と重なった。
「どうしてかは分からないけれど、君に触れることができるようになった」
シュウの優しい穏やかな声が震えて、涙がぽろぽろと落ちていく。
「これじゃあ、まるで僕が生きているみたいじゃないか…」
その言葉を聞き終える前に私はシュウを抱きしめた。
柔らかい肌と滑らかな髪の感触、確かな体温と呼吸の音。そして何よりも心臓の音が、感じられた。
「い、生きてるよっ…!だって、私はこんなにもシュウのこと感じるんだよ?生きてるに決まってる……!!」
「…ありがとう、……」
彼がいつも見せる余裕そうな笑顔はどこにもなくて、泣いて泣いて崩れてしまった笑顔がそこにあった。多分、私もきれいに笑えていないだろう。
どちらからともなく唇と唇が触れ合った。レモン味なんてものじゃない、それは涙の味がした。







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