10月の月末にもなればすっかり冬のようだと思う。薄く開いた窓からは冷たい風が流れ込み、目を離した隙に日はすっかりと落ちている。窓を閉めようとするも、錆び付いているのかびくともしない。寒気を感じた私はカーディガンを羽織り、また手元の資料に視線を落とした。
生徒会長と私は遅くまで学校に残り、今月中に仕上げるべき仕事に手をつけていた。毎月末こうして残っているわけではないが、今月は特に仕事が多かったのである。
「夢野さん、これ見てよ」
ふ、と向かい側の机に座っていた生徒会長が何枚かの資料を差し出した。それはサッカー部の決算報告書らしく、サッカーボールやユニフォーム等に生徒会費をつかった、と書いてあった。
「これがどうかしたんですか?」
「その下、」
よく見れば小さな字で、ハロウィンのためのお菓子、とも書いてある。生徒会長は頬杖をついて、
「俺がいない間に楽しそうなことやってるね」と呟いた。
言われてみて初めて気が付いたが、今日はハロウィンだったらしい。
「先輩もハロウィンみたいなことしましたか?」
「ううん、やってない」
相槌をして生徒会長の方を見ると、彼の翠色が私をじっと見つめていた。どこまでも深いその翠色から抜け出せなくなってしまいそうで、私は目を逸らす。
「夢野さん、」
生徒会長は身体を乗り出して――それはまるで鼻先同士がぶつかってしまいそうな距離だったから、私は思わず目を大きくしてしまった。目の前にある瞳に真っ赤な私の間抜け顔が映り込む。生徒会長は赤い唇で緩やかに曲線を描いた。その様子はとても艶やかで、しかし私の後頭部を包んだ生徒会長の片手が顔を背けることを許さない。
「お菓子をくれないと、悪戯しちゃうよ?」
「…いたず、ら…ですか……」
恥ずかしさのあまりしどろもどろになってしまう。
「持ってないの?」
二つの翠色は私を捕らえたまま離さない。
「じゃあ悪戯しちゃうね」
生徒会長の赤い髪が揺れて、彼は私の唇に噛み付いた。





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