私の母国とは違い、ホグワーツの夏は比較的涼しい。湿度が低いからなのかもしれないし、学校の方で調整してくれているのかもしれない。どちらにしてもあまり重要なことではないけれども、私はそればかり考えて廊下を歩いていた。
「いたっ!」
誰かにぶつかって声をあげる。見ると、相手は緑色のネクタイ。対して私は赤色のネクタイ。つまり犬猿の仲であるグリフィンドールとスリザリンなわけで、怖い人だったらと思うと無意識に冷や汗が出た。
「すみませっ……て、なんだマルフォイかあ」
見上げると不機嫌そうなプラチナブロンドが揺れている。珍しく腰巾着がいない。
「いちいちムカつく奴だ」
ムカつく、を強調されて嫌味を言われた。が、もう慣れてしまっているから何とも思わない。しかし、いつまでも納得がいかないのはこの身長差である。これでは私が彼を見上げなければならないのだ。
「今日は言い返してこないんだな」
「だってあなたの嫌味には慣れちゃったのよ。いつまでも子供っぽいことしていないで、ちょっとは大人になったら?ほら、セドリックを見習ったらどう?」
通りかかったセドリックに笑顔で手を振って、今度はマルフォイを睨んだ。顔を真っ赤にして、ああ多分これは本気で怒ってる。
「ふんっ、夢野の方がちっっっっさくて余程子供に見えるけどな!」
「な…なんですと…!?」
いまドラコ・マルフォイさんは言ってはいけないことを言いました。女子のコンプレックスを言うなんて英国紳士にあるまじき行為だ!いやマルフォイなんて最初っから英国紳士じゃないけど!
「私、堪忍袋の緒が切れたからね!!!馬鹿っ!マルフォイの馬鹿!」
「何だよ急に、それ以上言ったら父上に言ってやるからな」
「ファザコンは黙るフォイ!!」
「おいお前、もう一回言ってみろ。ただじゃおかないぞ!」
何度もマルフォイの頭を叩いて、頬っぺたを引っ張って、髪の毛をぐしゃぐしゃにしてやった。当然マルフォイも私に仕返しをしてくるから、お互いの年齢なんか忘れて、廊下のど真ん中で取っ組み合いのケンカを始めてしまった。すると野次馬が集まってきて止めるに止められない。そうしたら悪戯が大好きなとある双子もやって来て、言ったのだ。
「素直になれない男と女は見てて歯痒い。なあ相棒?」
「もちろん!さあマルフォイが先に告白するか」
「夢子が先か」
「「どっちに賭ける?」」

もちろん私とマルフォイは全力で二人を叩いた。




They have a lover's quarrel.
(喧嘩するほど仲がいい)




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