そっとドアを開けた。
薄暗い部屋、積まれた書物、光るディスプレイ、そして一人の男。明らかに怪しげだが、一応は私の幼なじみである。夏休みに入ると部屋から出てこないのよ、と彼の姉に言われ、仕方ないと思い紫外線対策熱射病対策熱中症対策をして私は熱い中数メートル離れた幼なじみの家にやって来た。彼の姉には相変わらず準備が良いのねと苦笑いされたがそんなことはさておき、問題はこの男。ディスプレイの前から動く気配が毛頭ない。

「ヒロトー」

案の定返答がない。
その後何度も呼び掛けるが応答なし。しかし何回も無視され続けるとさすがに苛々としてくるからバタンとドアを開け近付いた。

「何とか返事しなさ、…うわ!ちょっと、何これ!!何やってんのよあんた!」
「え?…ああ夢子来てくれたんだね嬉しいよ愛しの我が姫よマイプリンセス!!!それにしても何て格好をしているんだい?夏なのに肌を見せないだなんて常識的じゃないね、次からはミニスカートで来るように。それでさ、」
「馬鹿じゃないの」
一発頭を殴る。常識的じゃないのはあんただっての。
「…ところでヒロト。これは何?」
「今度のイベントで出す同人誌作りだよ。今回は雷門さん×夢子だからね」
「えええええ!!!!何あんた、まだ作ってたの!?夏未と私は友達よ?何度も言うようだけど、恋人じゃないから!!」
「そうだよね、夢子の恋人は俺だよね」
「あんたの恋人になった覚えはない!!」
にこにこしながらまたディスプレイに向かうヒロトにため息が出る。全く、どうしてこう気持ち悪くなってしまったんだろう。小学生の時は到って普通だった。優しいしかっこいいし、今じゃ考えられないけど初恋の人だったのだ。そして中学校はヒロトは受験し私は地元の公立だったから、一時期疎遠に。まあ思春期によくある気恥ずかしさみたいなものもあったかもしれない。その後、高校受験が終わり吹っ切れた私が久しぶりにヒロトの家を訪ねると彼は、…変態になっていた。
二度目のため息をつく。ああ、そうだ私はヒロトを外に連れ出すためにこの部屋に来たんだった。
「それよりヒロト。あんたちょっとは外に出なさいよ。お姉さん心配してるからさ」
「ええーやだよやだよお」
「外に出るだけでいいからお願い」
「うーん…。夢子が何かしてくれるならいいけど?」
「な、何かってなに…?」
「セック「言わせねえよ!!!」



――数十分後、私は"夏のイベント"とやらに一緒に行くことを引き換えにヒロトを外に連れ出した。



「ごめんね、待った?」
仕度を整えたヒロトが家から出てきた。白いポロシャツが何故か眩しい。普段の彼を知る私からすると、不自然なほど爽やかな出で立ちだ。(もっとも、彼と初対面の女の子なら黄色い悲鳴を上げそうだが)
「…あんた外に出るとすごく変わるよね」
「惚れた?」
「誰が惚れるか」






(かっこいいだなんて思ってないんだから!)



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