※若干気持ち悪い
鞄が落ちている。
中からは筆箱や教科書が飛び出ている。筆箱から出てしまったらしい沢山の筆記用具もばらばらと落ちている。
「一郎太!」
その大きくて明るい声は上から聞こえてくるようだ。
上を見ると、アパートの何階からか顔を出した幼なじみを見つけた。
「私もその鞄みたいにここから落ちたら、中身が沢山出ちゃうのかな!?」
「うーん、そうだな。やっぱり、お前の頭に入っているぎゅうぎゅうの脳みそが飛び出てしまうんじゃないか?」
「そっかー、ありがと!」
ぐちゃぐちゃのケーキが落ちている。
蟻が列を作りせっせとクリームを運んでいる。
「一郎太!」
昨日と同じ、だ。今日も幼なじみは元気な笑顔で俺を見ている。
「下、どうなってる?」
「蟻が沢山いる」
「…ふーん」
「あのね一郎太!」
幼なじみはアパートの外付けの階段を2段飛ばしで下りてくる。
「私ね、飛び降りたかったんだけど、やっぱりやめたの!」
「どうして?」
「だって、」
軽やかに階段を下りてくる細い足。白い足に目立つ青い痣と切り傷。半袖のワンピースから見える腕にも同じく痣と切り傷。
「私、虫が嫌いなんだもん。私の脳みそをちぎって蟻が巣に運んで食べるなんて、堪え難いよ。気持ち悪いよ」
幼なじみは1階にトンと降りると俺に駆け寄ってきて言った。
「それに、どうせなら一郎太に食べられたいな」
柩は用意しました