幼なじみの部屋に入るとやはり甘いお菓子の匂いがした。部屋中にお菓子が常備してあり、お菓子について書かれた沢山の本が散乱している。お菓子以外にあるものと言えば黒や紫を貴重とした家具達。と、ここまで聞くと私の幼なじみは可愛らしい女の子のように思うかもしれないが、実は男の子なのである。
「おーい、まだ起きてないの?」
いつでもベランダから入れる、というのは幼なじみの特権でもあり隣に住む者の特権でもある。だから今日もこうして勝手に部屋に入るのだが、いつもの如く彼は起きるのが遅い。ベッドに向かって起きろと叫ぶも起きる気配はない。
「ちょっと、ストッキーングっ!!!今日は遊園地に連れて行ってくれる約束じゃあないの?」
ベッドについているカーテンを開けると、彼は既に起きていた。しかしぼんやりとしたままで話し掛けても返事がない。
「ねえ、何で無視するの?」
「ん………おめざが、ない…」
「はあ…、昨晩枕元に用意していなかったの?」
「…うん」
仕方ないなあと思いながらもピンク色のマカロンを持ってくると、今日はブルーベリーケーキの日だよと言われた。私が持ってきてやってるというのにその言い草はなんだと言いたくなるがここは抑えてブルーベリーケーキを渡す。
「もぐもぐ…」
食べるときにもぐもぐという人なんてこいつしかいないと思う。



「夢子おはよう」
「あんたの場合はおそようでしょ。もう12時過ぎちゃったじゃない」
「ん…ごめん」
片道2時間もかかる遊園地はもう諦めるしかない。かと言ってこのまま帰るのは何だか勿体ない気がする。
「この後どうしよっか?遊園地はもう無理だよね…」
「ちょっと待ってて」
何でと私が問う前にストッキングは部屋を出て行ってしまった。



それから1時間は経っただろうか。ストッキングはまだ帰ってこない。もしかして私がいることを忘れているのかもしれない。
「遅すぎるってば…」
と、その時ドアが大きく開かれた。同時に香ばしい匂いがした…ような気がしたが気のせいだったらしい。それはただの何かが焦げた匂いだった。
「ストロベリーパウンドケーキ作ってみたんけど、食べる?」
「……?」
「だから、僕の手作りケーキ食べてよ!!遊園地行けなかったお詫びにさ」
彼がこうしてお菓子を作るのは珍しい。しかも誰かのために作ることなんて、空から槍が降るんじゃってくらい珍しいことだ。「ストッキング…!!あ、ありがとーっ!!!!!」
「当たり前だよ。だって僕達恋人同士なんだからね」





糖度はごく高め
(焦げすぎだよ…)(文句言わないで早く食べて)(はーい、)



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