病室のドアをノックする音が聞こえた。誰だろう。担当の医師か、それとも見舞いに来てくれた誰かか。私は体を起こしてベッドから体を起こして声をかけた。
「どうぞ」


ベッドとドアの間にあるカーテンをめくって現れたのは円堂守だった。
「キャプテン!!」
「おう!…夢子が骨折したって聞いて心配だったからお見舞いに来たぜ!!」
屈託のないその笑顔を見て私も笑顔になる。キャプテンの笑顔に励まされたのはこれで何度目だろう。
「みんなも来てるんだ。――みんな、入れよ!!」
ざわざわとしながら入って来たのは雷門イレブンのみんなとマネージャー達だった。
「マネージャーが減ってしまうと士気が下がるからな」
「夢子先輩!早く戻って来てくださいね!!」
こんなに暖かい人達に元気をもらっている。雷門イレブンのマネージャーになって本当に良かった。
「みんなありがとう」
「どういたしまして!」

「…おい、風丸は?」
「そういえばいないな。おーい風丸、入ってこいよ!!」
風丸という言葉を聞いてびくりとする。フラッシュバックする嫌な記憶。私は骨折の原因を思い出してしまった。
「夢子ちゃん顔色悪くない?」「そんなことないよ、大丈夫」
そんな時風丸が病室に入って来た。
「お、彼氏様のお出ましか?」
「お前らからかうなよ!!」
「じゃあ俺らは空気読んで退散するぜ」
「え、ちょっと…」
「またね〜!」
「待ってよ……」
私が引き止めるのも聞かずみんなは帰って行った。後に残されたのは風丸と私だけ。風丸はみんなに笑顔で手を振ってからくるりと私に振り向いた。
「別に引きとめなくてもいいだろ。俺と夢子は彼氏と彼女の関係なんだし」
「…でも!!足の骨折だって風丸がっ……」
その言葉を聞くと風丸はあの時のことを思い出したのか、楽しそうに笑った。さっきまでの爽やかな笑いと違う、蔑んだ笑い。
「面白かったなあ昨日の夢子は。嫌だって言いながらも足を踏まれて嬉しかったろ?」
「嬉しいわけないじゃない。……いたっ…」

パシンと頬を叩かれた。付き合ってから何度も叩かれているけど未だに慣れないから痛い。
「黙れよ」
「…恋人なら普通こんなことしないよ」
「黙れって言ってるだろ!!!」
最後まで言い終わらないうちに風丸がまた私を叩いた。叩いたというよりは殴ったに近かったけれど。
「……俺は円堂みたいに素直に気持ちを伝えるのが苦手だ。だから俺は夢子の肌に痣や傷が出来る度に、俺の愛が形になるみたいで嬉しいんだよ。」
「そんなこと言われたって…」
「なあ、」
急にふっと表情が緩む風丸。それから困ったように眉を下げて言った。
「ごめんな、こんな彼氏で。でも夢子、俺を嫌いにならないでほしい。これでも俺はお前を愛しているんだ」

私は風丸のこの表情に弱くって。

「…うん。私も風丸が好き」


結局風丸の愛を受け入れてしまう。







(確かに愛は本物だ)
(だがお前は、俺の優しさが全て真っ赤な嘘だってことには気付いていないだろう?)




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