保健室の先生から言われた言葉が気になってしょうがない。私と基山さんに何か共通点がある、ってことなのかな…。


「おはよう」
朝、教室に入ると1番に目が合ったのは秋だった。
「おはよ!あ、あのね、今日の1時間目の体育は、自習だって」
今は体育でサッカーを習っている。しかし私は体育は好きだけど、サッカーはあまり好きではない。だから自習でとても嬉しい。

チャイムが鳴った。みんなは何をするのかな、とまわりを見回してみる。
右斜め前の席、夏未さんは真面目に勉強をしている。さすが理事長の娘ってだけある。まさに全生徒の模範だ。
後ろの席の春奈ちゃんはというと、教科書を立てて何かをしている。ゲームをしているようだ。気付けば近くの塔子も同じように教科書を立てている。もしや、通信対戦中!?
「うーん…。じゃあ私は勉強かな…」
私は数学の問題集を開いた。
問題を解き、丸つけをしようと赤ペンを手に取る。すると、赤色で思い出した。そういえば基山さんは、何をしているのかな。
前にひとつ、右にみっつの席が基山さん。

彼女は、何かをするというわけではなく、ただ教室の時計を見つめていた。ペンの頭を唇にあてて、少し首を傾げているようである。
きれいな赤い唇。じっと見ていると、髪の赤色と唇の赤色は少し違うことに気付いた。こんなことは基山さんをじっと見ていないと分からないことだから、多分みんなこのことを知らないだろう。私だけの秘密みたいで何だか嬉しい。

なんて思っていたら基山さんが振り向いて私を見た。
どうしよう、バレてたみたい、すごく恥ずかしい。赤くなってるかも。
焦る私を見てか、彼女は可愛らしく笑った。


「っ……」
思わず息を呑む。
何故って、初めて基山さんの笑顔を見たから。


それは可愛らしくも美しい笑顔だった。

背筋が凍る程美しい、なんて言葉もあるけれど、それとは違う。

まるで雲の切れ間から月の光が差し込んだような……、そんな笑顔だった。




深呼吸して、闇を飲む



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