現代シンデレラA

ある時。
名無しが、買い物帰りにミレニアムタワー前庭を通ると、ミレニアムタワーから男性が出てきたのだ。
見たことがある男性だったので、ジッと見て、やっと思い出した名無し。
転ぶところを助けてくれた男性だった。
目線に気づいたのか、男性が名無しに寄って声をかけた。
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
「覚えてますか?」
「えっ!……えぇ」
「そういえば、これ落としましたよ」
スーツのポケットから、ハンカチを出した。名無しの大切にしていた名前入ハンカチだった。探しても見つからなく諦めていたが、まさか落としていたとは思わなかった名無しは、それを受け取った。
「ありがとうございます。えっと……」
「堂島大吾と言います」
名前を聞いた時、何故か名無しは思い出した。
いつだったか義理の姉の彼氏が堂島大吾の名を言っていたのを。
「あの…堂島さんはヤクザですよね?」
その質問に大吾はピクリと反応した。
「東城会の会長をしてます。でも何故しってるんですか?」
と、答えたのだ。
「姉の彼氏がヤクザなんです」
「あぁ。それで」
フッと薄く笑う大吾。
「お昼まだですか?」
「えっ?は、はい」
大吾は、どこかに電話をかけた。
その5分後、黒の車が目の前に止まり、運転手が出てきて後ろを開ける。
「乗って下さい」
名無しは、へっ?とした顔になったが、取りあえず車に乗り、大吾が行き先を告げると、目的地に向かった。

高級料亭に到着した二人は、個室に案内され何でも頼んでいいと大吾から言われたが、何を頼んだらいいか分からず大吾に素直に告げると、適当に頼んでくれた。
「美味しい」
次から次と運ばれてくる食べ物を口に入れると笑みが止まらない名無しの姿にフッと笑う大吾。
久しぶりの美味しい料理を堪能してから、落ち着いてから、会話する。
「美味しかったです。ありがとうございます」
「良かったです」
「あの……」
言葉の続きを言いかけたその時、名無しのケータイに着信音が鳴る。
電話を確認すると母親で、急いで出る。
「ちょっと!どこにいるの!」
「ごめんなさい」
「早く帰ってきな!」
「はい……」
ピッと切って、軽くため息を出す。
「早く帰った方がいいみたいですね」
「すみません」
席を立ち、いつの間に会計を済ませたのか高級料亭を出て、車に乗る。
「ありがとうございました」
お礼を言って、車を降りようとした時。
「待ってください」
と、急に止められて、大吾が着ているスーツの内ポケットから、名刺みたいな紙を出した。
「これ俺のプライベート用の電話番号とメールです……何かあったら連絡してください」
「は、はい!」
紙を受け取って、車を降りると、車は直ぐに発進した。
見えなくなるまで、名無しは見送った。

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