キミに恋するチョコレート
「ねぇ梓、チョコ嫌いって本当?」
「…誰情報?」
「宮地だけど…その反応からして本当なんだね?」
その言葉に梓は溜め息を吐き、私は項垂れた
「しんっじらんない!私物心ついたときからバレンタイン渡してますけど!?」
幼馴染の嫌いな食べ物をまさか高校からの付き合いのクラスメート(しかもそんなに梓と仲の良くない)に教えられるなんて、ショックもいいところだ
思わず声を荒げると、梓は困ったように、というか若干面倒くさそうに眉を下げた
「別に嫌いじゃないよ、苦手なだけ。食べられなくはないから。」
「それはどちらかと言うと嫌いに分類されるでしょ。」
「別に、食べずに捨ててるわけじゃないんだから、責められる要素ないと思うんだけどな。」
「食べてるから問題なんだってば!何でわざわざ嫌いなもの食べさせなきゃいけないのよ…。」
それ何の罰ゲーム、と思わず頭を抱える
「言ってくれたら違うの作ったのに…、何でまた黙ってたわけ?」
心底疑問で改めて梓にそう尋ねると、じぃっと紫色の瞳がこちら見つめ、諦めたようにその目を伏せた
「ただの意地だよ。」
「意地?」
「毎年毎年ほっぺた真っ赤にして『義理チョコ』渡される人の気も知らないで、ズルいよね。」
「は、」
「――『本命チョコ』になるまで、待ってやろうって思ってたんだよ。」
ほんの少し困ったみたいに笑う幼馴染に、開いた口が塞がらない
思いもよらない、そしてとんでもなく恥ずかしい返答に嫌でも顔が熱くなる
「あーぁ。こんな風に言うつもりなかったのになぁ。……で?」
「えっ?」
「――今年は、何をくれるの?」
昔はあんなに可愛かったのに
すっかり格好よくなってしまった私の幼馴染を少し睨みながら、小さく呟いた
「……チョコ。」
とびっきり美味しい、最初で最後の本命チョコを、キミに
(でもなんだかんだ、行動が可愛いよね)
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