涙の行方を教えて

片想いというか、報われないというか
苦手な方はご遠慮下さい。





綺麗に泣く人だと
その色のないただの水に、僕は魅せられた


「…涙くらい、拭いたらどうですか?」

「拭いても出てくるんだから意味ないよ。」

すん、と鼻を鳴らして、先輩は窓の向こうをただ見つめる
視線の先には、夜久先輩と東月先輩
仲良く手を繋ぎ話す二人の姿は、決して幼馴染のそれなんかではなかった
窓枠を掴む先輩の手に、ぱたぱたと涙が零れていく

「…そんなにも、好きだったんですか?」

「…違うよ。」

否定されるとは思わなかったから意外だった
けれど先輩の顔を見て、その言葉の意図を理解した




「好きなの、…すごく…。」




届かないと

叶わないと知りながらも、手放すことを知らない先輩

その気持ちに恥じぬように真っ直ぐに立つ姿に、目を細める

「…馬鹿ですね、先輩。」

「じゃなかったらこんな苦労してないよ…。」

「そうですね。でも、僕も大概馬鹿ですよ。」

「…え…、」

「報われないのに、どんどん惹かれてしまう。…僕を見ないその瞳が、腹立たしいのに、愛おしいんです。」

「……木ノ瀬くん…?」

ゆっくり
涙に濡れた瞳を見開かせ、先輩がすぐ隣の僕を見る
それに、柔く微笑んだ

「…やっと、僕を見てくれましたね。」

「、」

言った瞬間、彼女の表情が悲痛なものに変わる
きっと僕の気持ちをようやく理解し、そして自己嫌悪に陥っているのだろう
僕をずっと、傷付けていたんだと
馬鹿な先輩
そんな風に僕を気遣う余裕なんてないくせに

「ご…めん…木ノ瀬くん…。私……」

ぽろり

また頬を、一粒の涙が濡らす
ごめんなさい、と何度も紡ぐ先輩を、僕は何をするでもなく、ただ見つめ続けた




僕の為に泣く先輩が、どうしようもなく、愛おしく





痛いくらい、綺麗だった





(涙の色を、まだ知らない)



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