*嘯くTwinkleでカットした拗ねちゃった梓くん*




「…梓くん、まだ機嫌直らない?」

「別に悪くないですよ。」

お互い店番が交代の時間に近付き、私のクラスまで送ってくれている道中
ほんの少しだけ、梓くんがご機嫌ななめです




「そりゃあ知らない人は無視して下さいとは言いましたけど、見るからに危険な人だって無視して下さいよ先輩。」

「梓くんの中で水嶋先生は地よりも低い好感度なんだね…。」

「折角ガイドマップ手に入れたのに、先輩見てくれてないんですもん。」

「う、それは本当、ごめんね…?」

ちゃっかり梓くんが手に入れたガイドマップを読んでいる分、それを言われると心苦しい
水嶋先生と話している間、白鳥くんに妨害されながらもノーミスでストラックアウトをクリアした梓くんの勇姿を見逃してしまった私は苦笑してしまうばかりだ

「で、でも、水嶋先生も悪い人じゃないんだよ?梓くんが居ない間、虫よけしてくれてただけで…。」

「せーんぱい。これ以上僕の前で他の男の話するなら、その唇に噛み付いちゃいますよ?」

「かっ!? え、噛み付くの…!?」

「そうです。大丈夫です、傷付けない程度の甘噛みですから。」

「あ、甘いとか苦いとかじゃないから…。」

遠慮します、と首をふるふると横に何度も振る
というかそんなことされたら、恥ずかしくて死んでしまう

「じゃぁ、もう他の男の話はなしです。ついでにそのガイドマップも。」

「あ。」

ひょい、と手中の宮地くん印のガイドマップを取られたかと思うと、そっと左手を優しい熱に繋ぎ止められる

その熱に、先程触れた水嶋先生を思い出し、気が付けば小さく笑みを零していた

「先輩?」

「あ、ごめんね。別に梓くんに笑ったわけじゃないの。」

「何かありました?」

「うん…。」

不思議そうにこちらを見る梓くんの手に、私もゆっくりと繋ぐ力をこめる



「やっぱり、梓くんの手が一番安心するなぁって。」



他の誰でもなく、梓くんの熱が、私を落ち着かせてくれる

誰よりも、好きな体温



そっと微笑めば、少し目を丸くした梓くんが口元をガイドマップで隠し、溜め息を吐いた

「ほんっと狡いなぁ 、先輩は。」

「え?」

困ったような、それでもやっぱり優しい微笑みと紫の瞳を私に見せ、梓くんがそっと内緒話をするみたいに耳元に唇を寄せる 「そんな可愛いこと言われたら、全部許しちゃいますよ。」





先輩には敵いませんね、なんて梓くんは言ったけど






いまいち意味がわからなかったし、耳元で囁く方が、よっぽど狡いよ梓くん。






(あ、先輩顔真っ赤。可愛いです。)(耳元でそれ以上喋らないで!)














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