きらきら輝く、それは二人だけの星
泣きながら謝って、全てを吐き出した
いや、吐かされたと言った方がきっと正しい
あんまり往生際が悪いと、お仕置きしちゃいますよ?と凄く綺麗な笑顔で言われたら、流石に少し怖かった
ハンカチで頬に残る涙を拭ってくれながら、梓くんが溜め息を吐く
「…先輩は初めて会った時から変わりませんね。」
「え…?」
「初めて会った時から、馬鹿な人だなって思ってたんです。」
「え!?馬鹿!?」
初耳だけど、ずっと思われていたのかそんなこと。
思わず声が大きくなってしまった私のおでこに、ぺちんとデコピンがとんできた
「いっ、」
「馬鹿ですよ。……和先輩、覚えていますか?僕達が初めて会った日のこと。」
「…初めて、会った日…?」
それは、体育館倉庫での出来事だろう
けど、それの何を言わんとしているのかまではわからず、首を傾げる
「助けた時、先輩『木ノ瀬くんは大丈夫だった?』って言ったんですよ?僕は、あれを聞いて貴女の彼氏になろうって決めたんです。」
「え…?」
「あんな、自分が怖い思いをしたにも関わらず僕のことを心配するなんて、正直馬鹿な人だなって思いました。でも…その馬鹿なところに、僕は惹かれました。」
優しく語りかけられる台詞の意味が、わかるようでわからない
目をぱちくりさせていると、梓くんが少しはにかんでみせた
「人の心配を先にしちゃうようなお人よしを、僕は最低だなんて思いませんよ。和先輩は優しい人です。だからそんなにも自分を卑下しないで下さい。」
「あずさ、くん…」
「第一、僕は利用されても良いから彼氏役を買って出たんです。あんな危ない目にあったんですから、差し延べられた手は利用でも何でもするのが正解だと思いますよ?」
「そ、そういうもの…?」
「そういうものです。でも、差し延べたのが僕で良かったです。」
「へ?」
「そのおかげで、和先輩を好きになりましたし、両想いになれました。」
「りっ、両想いって……」
「あれ?違うんですか?」
確かにこの場合そうなんだろうけれど、本当に、梓くんはこんな私で良いのだろうか?
それこそ、明日の文化祭で運命の出会いがあるかもしれないのに
中々無くならない罪悪感に返事を詰まらせる私に、梓くんが眉を下げて微笑んだ
「そんな顔しないで下さい。僕は、本当に和先輩が良いんです。お人よしで優しくて、料理が上手で。時々天然なところも、無理しちゃうところも可愛くて…。ころころ変わる表情のどれも好きですけど、やっぱり笑顔が僕は一番好きです。」
手を掴んでいた指先が、そっと頬を撫でる
そして、言葉を止めた梓くんの唇がほんの一瞬、私の唇に触れた
見開いた瞳に、今まで見たどんな梓くんよりも優しく、男らしい表情の彼が映る
「和先輩、観念して僕に全てを下さい。」
強い意思を感じる、告白
綺麗なアメジストの瞳に、胸が熱を帯びていく
――あぁ、敵わないな
優しく、そしてどこか不敵に笑う梓くんに、最初に思ったのはそんなことだ
敵わない、この格好良くて可愛い後輩には
きっと一生かかったって
「…ねぇ、梓くん。」
「はい?」
「最初を、やり直しても良い?」
「、」
「私は、梓くんが好きです。…私の彼氏になってくれますか?」
さっきのような勢い任せなんかじゃなくて、ちゃんと伝えたかった
嘘も騙しもない、私の梓くんへの気持ち
情けなくも声が少し震えてしまったけれど、梓くんは目を丸くした後、ふは、と息を吐いて笑ってくれた
「――僕も好きです、和先輩。」
おかしな告白と嘘で始まったキミとの関係
優しさと苦しさと、どうしようもない愛しさを知った毎日は、決して無駄なんかじゃなかった
積み上げたキミとの日々は
どんな星よりも輝き、私達のこれからを照らしてくれる
これからは嘘偽りの変わりに、とびきりの愛を紡がせてね、梓くん
(でもさっきの別れ話はちょっと傷付いたんで、お仕置きしても良いですか?)(え!?)
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