「というか、何で来海が生徒会室に居るんだ?」

「部費の経費まとめ。提出今日までだったから持ってきたら、颯斗くんにお茶に誘われてつい。」

「ったく、部外者があんまり簡単に入ってくれるなよ?一応一般生徒は立ち入り禁止なんだからな。」

部外者
その言葉に、少しだけ胸が軋む
けれどそれを表情に出さないようにやり過ごす術も、この二年間で随分と身についた
おかげでクールビューティーなんて桜士郎にからかわれて、いい迷惑だ

「そうだ月子。この間の文化祭のアンケート集計、どうなった?」

「もう出来て一樹会長の机の上に置いてますよ。」

「お、流石仕事早いなー。」

「わっ。髪ぐしゃぐしゃにしないで下さいよ会長〜。」

隣でじゃれる月子ちゃんと不知火を見ながら、颯斗くんが淹れてくれた紅茶を飲む

(…いいなぁ)

もう随分、彼の名前を呼んでいない
その手に触れていないと、ぼんやりと目の前の二人を見ながら思った


「来海、そういえば桜士郎が捜してたぞ?」

「は?桜士郎が?」

「なんか課題がどうのとか言ってたな。」

「あー、忘れてた。観測しなきゃなんだった。颯斗くん、紅茶ご馳走様。」

「いいえ、またいらして下さいね、来海先輩。」

「颯斗、部外者入れるなってさっき言っただろ…?」

「会長がサボっている間の雑務を時々やって下さるんですから、そんな不躾なこと出来ませんよ。」

颯斗くんと一樹の会話に日頃の行いが違うんだよ、と茶々をいれてティーカップを置き、立ち上がる

「じゃぁ、またね不知火。」

「あぁ。課題、頑張れよ。」

その言葉に軽く手を振り、生徒会室を後にした
ふと窓の外を見れば、色鮮やかな落ち葉がひらりひらりと踊るように舞っている

「…もう、秋か。」


記憶を消されたのは中学三年生の春休み
戻ったのは高校一年生の夏休み
一樹に会わなかった期間の方が大半だったけれど、一年生の春に再会した時私は彼を「不知火」と呼んでいた
そんな風に呼んだこと、一度もなかったのに
これも一樹の力の成せる技なのかどうかもわからないけれど、一度その呼び名を使ってしまっては今更戻すことが出来ないのだ
更に言えば、普通の幼馴染の距離がわからず、星月学園に入ってからまだ一度も一樹に自分から触れたことがない


記憶が戻ってからもう二年が経つのに


(気付かれるわけにはいかないもんなぁ…)



そう、一樹は知らない




私の記憶が戻っていることを




「卒業まで、あとちょっと…」




絶対に、ばれてなんてやるもんか




小さく決意して、私は桜士郎を捜しに廊下を歩きはじめた




(クラスメートや後輩の方が、ずっと近いところに居るよね、私達)









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