「桜乃先輩って一樹会長と幼馴染なのに、お互い苗字で呼ぶんですか?」

可愛い後輩である月子ちゃんのその質問に、私は不知火と顔を見合わせた

「幼馴染って言っても、あんまり接点ないもんね、私達。」

「そうだな。元々学年も違ってたしな。」

「うーん、でも勿体ないですよ。折角の幼馴染なのに…。」

「月子ちゃんのところが仲良すぎなんだよ。普通の幼馴染なんてこんなもんだと思うなー。私不知火のこと月子ちゃんより知らない自信あるもん。」

そう言って少しむくれる月子ちゃんの頭をよしよしと撫でた
ちらりと隣に居る不知火を見れば、少し安心した表情をしていて、私も安堵する


きっとその表情の変化は、私にしかわからない




本当は私も「一樹」と呼んでいたし、一樹も私を「桜乃」と呼んでいた
彼が星月学園に入学するまでは、それこそほぼ毎日のように一緒にご飯を食べていたくらいだ
彼が自分の力に苦しんでいたことも、喧嘩に明け暮れていたことも、全部全部知っている
けれど、一樹が星月学園に入学する直前




彼は私から「一樹の記憶」を消してしまった




(一番近くて、一番遠いお話)











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