どうかこの先の未来も





「遥、はぐれるよ。」

はい、と差し出された手に、僅かに目を丸くする
確かに、この神社の人ごみじゃはぐれるかもしれない
それはわかるのだけれど、そう簡単にこの手を取るのは躊躇われる

「…ふ、服を掴んじゃダメ?」

「僕の服、そんなに伸ばしたいの?」

「いや、そうじゃないけどさ。」

「別に手を繋いでてもおかしい関係じゃないんだし。そんなに照れるほど短い付き合いじゃないと思うんだけどなぁ。」

「半年も経ってないじゃん。恥ずかしいってば。」

む、として梓を見た瞬間、どん、と後ろから背中を押される
すみません、と後ろを振り返ろうとすれば、そのまま梓の腕の中にすっぽりと収まっていた

「ちょっ!」

「ほら危ないんだから。手を繋ぐのが嫌なら、このまま肩を抱いて行こうか?」

「繋ぐ!繋ぐから!近い近い近い!」

ぐいっと梓を押し返すと、楽しそうに笑われた

「本当遥は慣れないよね。可愛いんだから。」

「うるさいな、梓は慣れてて腹立つ。」

「あれ、嫉妬?」

「う・る・さ・い!手、繋ぐなら繋いでよ!」

にやにや笑うんじゃなくて、愛しそうに笑うから逆に困る
恋愛なんて全くの初心者だし、この性格だから、中々梓の態度にも上手く対応出来ない
ちら、と周りを見れば、仲睦まじい恋人達の姿がちらほらと目につく
幸せそうに笑い合う人達を見て、少し息を吐く

(あぁいう風に出来た方が、きっと梓も喜ぶんだろうなー…。したくないわけじゃないけど、なぁ。)

羨ましいな、と
自分らしくなく、思ってしまった






「遥、」






――ぎゅ、と
優しく指と指を絡められる

「っ、…梓?」

いきなりのことでびっくりしていると、ふふ、と梓が笑みを零した

「何?」

「いや、嬉しくて。こうやって遥と二人で年越し出来るなんて、去年の今頃は全然想像もしてなかったから。」

「それは私もだよ。まさか同じ学園で、一緒に弓道するなんて思ってなかった。」

本当に、想像もしない1年だった
手を故障して、絶望して
それなのに陽日先生に無理矢理弓道部に連れていかれて

瞬く星に再会した

「…でも、」

「ん?」

「幸せな一年だったな。」

色んな辛いことも、苦しいこともあったけれど

「それにさ、これからも幸せ約束されてる感じだよね。」

「え?何で?」

「だって、梓と弓道とか、色んなこと出来るんだよ?」






この幸せにたどり着くことが出来たのだから






私は、きっと誰よりも幸せだ







「楽しみだよね、色々。」

「…遥ってさ、時々凄い殺し文句使うよね。」

「え?…使った?」

はぁ、と呆れたみたいに、でもどこか楽しそうに笑う梓にきょとんとする
そんな覚え、全然ないんだけれど

「狡いよね、遥は。」

でも、と
今までよりもすぐ傍で、空気が震える









「そういう遥が、凄く好きだよ。」








来年もその先も約束しよう、幸せを






二人で居る限り、ずっと






(今年も、よろしくお願いします)



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