中学を卒業した春休み

私は、色をなくした





星月学園に入学して二ヶ月が経ったある日の放課後
すっかり疲れている私の横には、にこにこ顔の陽日先生
そして目の前には弓道部の扉

「皇!今日はありがとうな!」

「だから陽日先生、私は入部はしませんからね!?」

「大丈夫だ、仮入部も出来る!」

「しないってば!!」

人の話を聞け!と一喝するものの、先生は何も聞いていない様子で弓道部の扉を開けた
「期待のルーキーもう一人追加だー!」なんて声に、もう呆れしか出てこない
だから、入部しないってば。


そもそも、私は弓道部の扉すらくぐる気はなかったのだ
しかし入学してすぐに、小さな、とても先生には見えない彼にきらきらした瞳で捕まえられてしまった
断っても断っても誘ってくる陽日先生に、見学だけならと、所謂根負けをして了承したのが今日の昼休み
今すぐにでも逃げてやりたかったが「早く来いよ!」と嬉しそうに手招きされて、仕方なくその扉へ向かう

(やっぱり、本当のこと言えば良かったなぁ)

こんなに期待させてしまうと、いっそこっちが申し訳なくなる
絶対に私は弓道部には入らないのだから
ん?そういえば、さっき陽日先生は何て言った?


もう一人追加?


「失礼しま――」




――――タンッ!




さっきの先生の言葉の意味と、どう謝ろうか
それだけを考えていた私の目の前で

いつか見た星が、瞬いた

「……、」

「皆ちゅうもーく!今日からもう一人入部するぞー!」

「っ!ちょっと、先生!?」

「え!?女子だ!先生その子今年の女子っすか!?」

「今年の女子もうちなんすか!?うおぉぉぉ!」

先輩らしき人達が、雄叫びをあげるから思わずうろたえる
本当にみんなこっちに注目するから居心地が悪いことこの上ない

「先生っ、だから私は――っ!」



「――皇?」



綺麗なアルトが紡いだのは、紛れも無い自分の名前
目の前には、見知っている姿
あぁ
こんな声、してるんだ



「…木ノ瀬、」



(こんなところで、初めて交わる道)



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